ロッツォ國友

首のロッツォ國友のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.4
全員、卑近。


人間性がしょうもないのに無駄に強くなっちゃった奴らがひたすら殺し合う人命軽視オールスター卑近バトル!!!!!
楽しい✌️✌️✌️✌️✌️


まぁ、あたし歴史のことはよく分からないので…史実については何も触れないで書きますわ。
ただ、ビートたけし様もたぶん、そんなに史実を意識してない…気がする。


顔はいいけど、ほぼ全員かっこよくない!!
みんな酷い!!!
アウトレイジのチンピラよりかっこよくない!!!!
だが!!
それがイイ!!!!!

それぞれの惨くて酷いキャラクターと、各々の立場における"身の振り方"を楽しむ群像劇と言えようか。



名の通った戦国武将がわんさか登場するが、どいつもこいつも本当しょうもない。

史実は知らんが、戦国武将として一般的にイメージされ得るようなカリスマ性やカッコよさが全くない、逆張り的なキャラ付けとなっている。
とにかく、アクが強い。

にも関わらず、トータルではとても納得感のある味付けだったと思う。


だって冷静に考えたらさ、敵の首を獲って領地だの天下布武だの語るなんて、完全に狂人の発想じゃないですか。
頭おかしくないとあんな仕事やれませんよ。
倫理観を捨てた奴から勝つゲームだと思う。

たまに、敏腕経営者とかが憧れのモデルにしてたりするけど、とはいえM&Aした競合企業の社員の首を晒したり家族を皆殺しにしたりしないじゃん。
でも、当の連中はそれが日常なわけっすよね。



マトモな部類の真面目な戦国時代劇であれば、名だたる武将はしばしば、現代社会の規範によって再定義されたマトモな人間性を持っているスマートでカッコよくて模範的な人間像にされがちだけど、そしてそれが史実通りなのかもしれないけど……そんな「マトモな人間像」と地続きに切腹斬首晒し首生活をエンジョイしてるって描写には、どこかチグハグした印象になってしまう。
気がする。

共感性の高い優しいカッコいいリーダーが首を斬って出世するって、現代人目線にはやはりどことなく整合性が取れていない感じがしないだろうか。


その点、本作はどうでしょう。

全員卑近だから、首を刈るも腹を切らせるも平然とやるような共感性の無さ、人命や人心の扱いの酷さ。
ピッタリじゃないですか。いつ誰が人を斬ろうが少しも驚かない。
"だってそういう奴らだもん"で終わる一種の健やかさ。

言ってみれば、大河とかの真剣な時代劇は
「現代的規範」
に基づいて人間ドラマを構築しているのに対して、本作は
「平気で首を斬る人間」
にピントを合わせて人間ドラマを構築している…と捉えられる。

人を傷つけることへの躊躇の無さがあるからあの場に立てるのだ。出世するのだ。


"有名戦国武将なのに酷い奴!"
ではなく、
"酷い奴だから有名な戦国武将になれたのかこいつら!"
ってことなんだと思う。

悍ましいほどの卑近さ、それ故の誰にも共感せずに済む軽薄さが本作の大きな魅力ですね。



グロシーンは…アウトレイジほどではないにせよバッチリありますね!

さすがの北野映画よ。

猟奇的…の、一歩手前くらい。
これまた「首を斬る価値観」に合わせたバイオレンスのレベル感。
整合性を感じる味付け。

でも、まんじゅうのシーンは怖かったけどねw



演技面について言うと、"セリフを喋ってる感"が濃厚なシーンはそこそこあるんだが、全員有名人のお気楽卑近ロワイヤルムービーって感じのノリなので、そもそもそんなに演技の迫真性が欲しい作品でもなく、全然気にならなかった。

でもさぁ…キム兄、ふつうに演技うまくないね???


VFXはまぁ…VFX使うてはりますねぇって感じのレベル。
エンドロールを観るに海外委託なのかな?
今ドキのハイレベル映画と比べてしまうと、さすがにクオリティが微妙なCGに見えちゃう。

もうちょっと、なんとかなりまへんかね。
こんなもんすかね。



ゲイ描写ならぬ、衆道描写はいいですね!
大半のノンケには理解できなさの象徴的要素として機能すると思うし、「実は俺はあの人のこと好きで!!!」みたいなので一喜一憂&斬った貼ったするのにはしょうもなさも感じられる。

良いスパイスだな。

現代一般には、衆道ってのは武士の高尚な嗜みで〜〜って解釈されてるけど、本作においては野蛮人として性欲撒き散らしてるだけみたいな演出に終始しており、これまたイイ演出だったと思う。
何か高貴な関係性みたいな描き方は全然ない、普通に恋愛対象が広くて性欲強いから交尾してるだけみたいな、そんな感じ。
そういった意味での、野蛮人要素。



あと何よりやっぱり尾張弁信長がサイコー過ぎるなーーー!!!
最初はマトモだったけどどんどんイカレてって、劇中では気の触れた最晩年だけが描写された……と、読み取れます。

てかさ、こういうノリのキチガイ信長って意外と初めてじゃない?
そんなことない?

誰がどう描いても概ねカッコよくなっちゃう彼を、あんなふうにイカれたダイナマイトみたいな化け物として描く度量が凄い。
全っ然憧れのタイプじゃない。

ただただ近づきたくない危険人物なわけだが、ここまで来るとみんな跡取りになりたいので逃げられず、媚を売り続けるしかない。

それでも見栄えが良く、その場その場で場を完全に制するあの制圧力ともいうべき覇気が、彼の強者たる成功の秘訣であり、敗因にもなった…ように見えますね。


てか、尾張弁で何言ってるか分からない部分が1割くらいあって良い。
超怖い。
部下もあんまり分かってないんじゃないのと思う。
んで急に殺されそうになったり自死させられそうになったりで散々である。

クソ訛ってるダイナマイト信長、サイコーでしたわ。
一番の見所だったでしょ。



ちょっぴり挟まれる羽柴たけしコントもすっごい好きだなぁーーーー
割とアドリブなんだろうねあれ。浅野さんも大森さんも大層慌てたのではないかな。

若干長尺気味で、ギリッギリ違和感にならないラインで切り上げてるのがなんか流石だなと思いました。


ていうか、これは

「落ち着かない強力な殿様が、戯れに命を弄ぶような無茶振りをして自身の力を確かめるようなパワハラ仕草をする」

……という小ネタなわけだけど、それって

「落ち着かない強大な大御所芸人が、戯れに若手芸能人を振り回すギャグを披露する」

という構図において、ビートたけし様自身の今の立ち位置が少なからず投影されているように見えたんですよね。
てきとうですけどね。


そもそも本作自体が、ビートたけし様の老後の余興であり暇つぶしである…と捉えると、なんとなく全体の作風やリアリティラインの置き方にもしっくりくる気がする。

暇になった城主が、息のかかった郎党どもを集めて舞踊でもやらせたろう、的なね。
だから皆さんも難しいこと考えずにこの卑近ロワイヤルムービーを楽しんでくれよと、そんなスタンスに感じるんすよね。

まぁ、全部妄想なんですけど、そういうスタンスなんだとしたら、俺はまさにその通りに楽しめました。
肩の力を抜いて盛り上がれました。



そんな感じで、めちゃくちゃ面白かったっす!!
いやーーー尾張弁モノマネしたいんだけど、言い回しがむずいね。出てこない。
俺のおばあちゃんのモノマネでゴリゴリの西部の讃岐弁ならイケるんだけど、怖くない。
もっかい観ようw

ライトにとっても楽しめました!
ごっつあんでぃす!
ロッツォ國友

ロッツォ國友