ロッツォ國友

君たちはどう生きるかのロッツォ國友のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃおもしろかった!!!!
けど話は意味不明だった!!!

もう、この二言に尽きますよ。
あとは全部、その説明でござんす。
どうせ何も説明にならないが、ネタバレ全開にしときます。一応。


意味不明だけど、大満足。
幸せだけど、味は何もわからんかった。
トータルは好きだけど、解説は一切できない。そんなところですね。


ということで、本作の要素を良し悪しで分けて、
<イイ!!!>
<意味不明!>
で分類して主観的に書くとしましょう。
何もわからなかったから。



<イイ!!!>
○ジブリ要素全開なところ
…もうこれは最初から説明になってないんですが、全体を通して「ジブリらしさ」をビンビンに感じさせる作風で、もうそれだけで嬉しくてたまらなかった。

ナウシカや紅の豚は生まれる前の作品なので、物心がついた時点で家にVHSがあった。
あたしジブリにドップリ浸かって育ったんすよ。ジブリ要素を観たらもう「幸せ」以外無いですよ。

だから公平正常な判断はできないが、これはジブリによる人々への影響があまりにも強大広大絶大だから仕方ないことだと思う。
しょうがないじゃん。だってジブリ大好きなんだもん。

乱暴だけど、ジブリ要素だからイイ。
それでいい。


響いた点を並べるなら、描写面とモチーフ面に分けられるでしょうかね。

(描写面)
☆ご飯が美味しそうなのがジブリで良い。スープも良かったし、パンにバターとジャムを塗るところも良かった。あのみずみずしさは随一のものだね。ラピュタのパン、紅の豚のディナー、千と千尋のお供え物食い大会とかね。

☆やたら大粒の水がたくさん出てきてジブリで良い。やたら大粒の涙も、やたら大量の血もなんだか懐かしい。表現にパワーを持たせる必然的な大袈裟さといえるでしょう。千尋の涙を思い出すよね。

☆かわいくて不気味で容赦ない敵もジブリで良い。過去作の何に似てる?と聞かれるとちょっと思いつかないが、どこか懐かしさのある恐ろしさ。インコ怖い!っていうのも新鮮だったね。今までも鳥はなんとなく怖いもののイメージで描写されてたかなと。湯婆婆のカラスとかさ。

(モチーフ面)
☆洋風で怖い建物がジブリで良い!!千と千尋序盤のが濃いめになった感じ。全然意味分かんないデザインの、おどろおどろしい洋館の佇まいは不気味でありながら興味をそそるバランス感。「魔力」と呼ぶに相応しいパワーがあるよね。好きだなぁ。

☆木の構造物が崩れる描写もジブリで良い!ラピュタだね。木の線路が崩れるところとか、あとロボットが暴れて壊れる軍基地のところとかね。作画が大変すぎる。

☆建物の外で木を掴んで間一髪!もラピュタで良い!ラピュタだ!!!

☆おっさんが海の見える庭に座るところは紅の豚で良い!!私、ここで賭けをしてるの。


○思い出補正
身も蓋もないけど、ジブリを観られたってことそのものに満足してる。

こんなのレビューでもなんでもないかもしれないが、長い年月をかけて積み上げてきたジブリワールドに再入場して満足したのだから、それでイイと思ってる。
ズルっちゃズルだけど、今までの遍歴を全て含めて「作品」と言えるのかなと。

そもそもね、最初に映される青地に黒線のトトロの絵。アレが劇場の画面で見られただけで大満足なんすわ。幸せ。
「2023 スタジオジブリ」とかって書いてあったよね。いやぁ生きてて良かったなぁ。
ありがとうございます。幸せです。



<意味不明!>
○眞人くんの心理描写
意味不明です。
最初はなんか、"母の喪失"と"父の再婚"に揺れる少年の心理を描いて……いるのかなと思ったけど、途中から何を考えているのかさっぱり分からなくなりましたね。
というか、彼自身に何かを決めたり判断したり成長して手に入れたりする役割を与えていないように思える。意図的なのかなと。

○パパ
性欲。

○ファンタジー部分全部
本当に意味がわからない。
終盤のアレコレを汲み取るに何となく、それぞれの別世界はどこかでリンクしていて、互いに共通する部分はそれぞれ異なる形を取って現れていて…全部を手に入れることができようとも、それでも己の住む世界に戻りたいんだ的な、なんかそういうこの世の理に触れて成長するアレに見えなくもなかったんだけど、よく分かんないっす…

たぶんこれ、駿の中には全部の答えがあって整合性も取れてて説明できるんだろうけど、鳥頭鳥目のあたしらには露ほども理解できないんだと思うんすよね。

何かのルールや伏線のような説明がたびたび入るが、特にそれがあとで生きるとかはなく、また新しい別の説明が入ったりしている。
ので、物語内のセリフをしっかり追っていても話がわかることはない。その場その場でボンヤリ解説されているに過ぎない。
わざとなんでしょうな。そもそも最初から理解してもらえる世界を作る気がない。

○アオサギの動機
まぁ動機なんて言い出したら全員分かんないんだけどさ、そもそもあの世界に向かう理由となる、アオサギが眞人を誘い込んだ理由が分からない。
お母さんがいるとウソをついて神ジジイの元に連れてきた?気がするが、なら途中の冒険は要らないし、挙句に禁忌しちゃったわけだから、何で外に行かせたの?みたいな。。

いや、まぁ、野暮ですけどね。



……っていう感じです。。。
なので総合すると、話は全然分からないけどジブリだから完全満足した!という風になります。
なんという、駿の傀儡。


こういう自分にとって飲み込めない物語ってさ。
色々なレビューを書いたり読んだりしていると「難しい」「自分に合わない」「意味不明」「説明不足」……とかの表現で形容すると思うんだけどさ、本作については「意味不明」がしっくりくるかな。

偏屈ジジイが作り出す意味不明な世界を、解き明かそうってスタンスになること自体がなんかダサい感じがする。
いいんじゃね、これで。


だって今までのジブリを「分かってた」か?っていうと、別にそんなことはなかったと思うんだよね。
「なんか分かんないけどイイなぁ」でこれまで20〜30年やってきたんじゃないの?
マジで「分かってる」奴、そんなにいるだろうか?
俺は全然いないと思う。最初からみんな何となく大好きなんだよ。で、それでいいんだよ。

観終わってみて、今回のジブリが分からなかったんじゃなく、今まで通りのジブリを今まで通りに楽しんでるだけでは?って思ったんだよね。


駿の好き勝手を、やや後ろでただ眺めてるだけ……っていう形の幸せがあると思うのよ。
それを解き明かそうなんておこがましい。
これが駿。これがジブリ。
なんか、何よりこれで満足しちゃってる自分がいる。

超絶スバラシイ完璧解説を見せられたところでさ、全然納得できない気がするんだよね。「おめえに何が分かるんだよ」としか感じない気がする。
理解できた!とか言ってる奴いたらぶん殴る気がする。"俺を理解できるか!?"って聞くと思う。

きっと、分からんくらいがいいのよ。



あと一つ、邪推を足すなら。
大体の映像作品がそうなのかもしれないけど、エンドロール終盤に、名だたる著名なアニメスタジオがいっぱい書いてなかったかい??

あんま詳しくはないんだけど、スタジオ地図とかポノックとか4℃とかさ。
あれ、普通のことか??

だから、ジブリ要素を作画的にたくさん出してたのも、実はジブリ的なるものを描く技術を後輩スタジオ達にやらせながら継承して、最後に引き継いでもらおうっていう意図があったりしないだろうか?

君たちはどう生きるか?ってのは、ある意味滅びゆくジブリから魂を受け継いだアニメスタジオ達に投げかけられた遺言なんじゃないかと思ったね。
あとは頼んだぜ!っていうさ。
ジブリが引っ張る時代は一つ幕を閉じたのは事実なわけで。

意味不明ななりに、そんなことを考えてましたわ。



以上でござんす。
すっげえ満足感。なんか、スタジオジブリとしてもイイ終わり方な感じがする。
説明はできないが、風立ちぬよりも終わりに相応しい作品な気がするね。総決算しつつ、しかしちょっとスケールダウンしてて、静かな着地。

あんまり余韻に当たるシーンがなくブツっと幕を閉じたのも、若干物足りなかったけれど後腐れなくてイイかもしんない。

意味不明で何も説明できないですが、面白かったです。
ごっつぁんでした。



☆☆☆☆追記☆☆☆☆
神おじと眞人を誰に例えるか?問題は結構多様な解釈があっておもしろい……!!
絶対にコレだ!とはならない作品が好きなんだよね。自分の中の予感を、いつまでも予感のままにさせてくれるおおらかさが好き。


個人的に思ってるのは、
・神おじが今の駿
・眞人が幼少期の駿
なんじゃないかなと。

例の積み木はジブリで積み上げた功績(=ジブリそのもの)で、これを誰かに継いで欲しいという意思が、神おじにはある。

されども"暗い少年"だった幼少期の駿はそれを拒否しているし、挙句にインコ王が全部ぶった斬って壊してしまうので、幼少期の駿がそれを継ぐことは叶わない。


今こうして、立派な積み木が13個積み上がっているけれど、
「積み木を継いで欲しい」
と、
「前途ある若者が積み木なんか継がなくていい」
という感情の両方が駿の中にあるんじゃないかなぁ。

アニメ界の神とか王にされて、それによって得たものはあるけれど、とはいえいつもギリギリでやってきたグラグラの塔は、その結論は、幼い頃の自分を救い得るものではない…と思ってないかな。

だから最終的に、物語は積み木を眞人に託さず、選択の余地すら奪ってしまった。
「世界を変えるアニメを作ることより、色々思うところはあってもまだお前は家族を大事にするんだよ」と、なんかそういう暖かな突き放しをしているようにも見えた。

神おじにも眞人にも、どっちにもウソはないのだろう。
積み木を若い人に渡したいが、若者がこんなものを受け取らなくて良いとも思ってる。そういうアンビバレンスが駿の中にあるんじゃないかって思えた。


まぁ、テキトーなんですけどね。
家族と友達と未来を選ぶという意味で、暖かい作品だったのかなと思っている。
ロッツォ國友

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