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怪物のGyGのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.0
物語前半、紋切り型にもホドがある鉄面皮校長(田中裕子適役!)、熱血なんだろうが場違いに飴をほおばったりするちょっとアレな教師(瑛太適役!)、天性のモンペ体質かと思われる母親(安藤サクラ適役!)などなど、タイトルの「怪物」を彷彿とさせる人物が次から次へと畳みかけるように登場します。

この辺りはかなり急流になってて、見る側は中だるみすることなく画面に釘付け。
そのスピード感・引力の強さは秀逸としかいいようがありません。

さて、物語の大筋がシーケンシャルに提示された後、各エピソードが別のセリフ、別の視座、時には逆照射する形でフラッシュバック的に再演されます。

すると案の定、数十分前に得た認識が強化され、あるいは否定・上書きされ、あるいは両義的な意味合いを帯びてくるものがでてきます。
私の場合、すべてのエピが変化しました。
変化の数ではなくインパクトの強さで表現すれば、よく醸成されたアンビバレントな映画です。
つまりは、再見すると別の世界がみえるかも、そんな予感がする映画のように思いました。

余談です。
校長が夫と遮蔽板をはさんで会話するシーンがあります。
是枝監督は「三度目の殺人」でも同様のシーンを撮っています。
表面的には会話が成り立っているようでも二人は別の世界にいる、そのことを一枚の板が語っていたと思います。
※ヴェンダースが「パリ、テキサス」にも同様のシーンがありました。これは何ごとも成立しない世界にいることを象徴した場面だったようです。
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