製作総指揮で脚本も手掛けるチャーリー・ブルッカーによれば「コロナ禍を経験した社会が、これ以上崩壊していくようなストーリーに対する需要があるとは思えない」との事で2019年以降、制作が止まっていたNetflixオリジナルの風刺ドラマ・アンソロジー「ブラックミラー」が、久々に帰ってきた。
確かに「これってブラックミラーみたいだ」的な奇妙な事件が増えている現代に於いて、このシリーズが次の一手は踏み出すのは、そう簡単な事ではないのかもしれない。
当初はアイデアありきの短〜中編が多かったこのシリーズだが、今回はほぼ全てが1時間超の長編で、ストーリーも非常に凝っている。Netflixをメタ的に表現した「ジョーンはひどい人」「ヘンリー湖」は毒味が凄いし、続く「ビヨンド・ザ・シー」は映画並みの展開を見せるSFの力作だ。
そして、「ブラックミラー」らしいユーモアを満喫できるのがラストの「デーモン79」。1979年を舞台にしたホラーなのだが、登場する悪魔が人間の世界に馴染むために、当時人気だったドイツのカルト・ディスコ・グループ、ボニーMのメンバー、ボビー・ファレルの姿に変身するという、何ともお馬鹿な展開。
このボニーMというグループは、韓国映画にもなった「サニー」のヒットでも知られるのだが、何故かイギリスでは10年に1回ぐらいのペースでリバイバル・ヒットを繰り返している。去年か一昨年辺りも、本作で挿入される「ラスプーチン」がBBCで掛かりまくっていたから、その余波で作られたエピソードなのかもしれない。このエピソードでは他にも'79年当時のヒット曲が満載で、何とも言えない味わいだ。