回想シーンでご飯3杯いける

あまちゃんの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

あまちゃん(2013年製作のドラマ)
5.0
※初放送時から10年経過しているので、"若干の"ネタバレはご容赦下さい。

最初に放送された2013年は公私共に超多忙だった時期で全く観られず。今回の再放送でようやく全て鑑賞できた。

いやいや、もう本当に凄い。のん、橋本愛、有村架純、松岡茉優という、その後の10年間で日本の映画/ドラマを席巻する事になる若手女優が揃って登場する青春ドラマの体を取りながら、その根底にあるのは親子三代による葛藤と和解の物語で、多くの伏線を含むドラマは、最終的にそこを軸に回収される。

三代のうちの真ん中(春子)が元アイドル志望で、芸能界のチャラい部分を心底嫌っているという設定は、それを演じる小泉今日子が元アイドルで、王道の松田聖子辺りに対して、チャラ系を担っていた事を知る僕のような世代には、ニヤニヤが堪らないメタ構造になっている。

その春子が、アイドルを志望していた時代に、有名女優の影武者としてヒット曲「潮騒のメモリー」を歌っていたエピソード。更には、春子の若い時代を演じている有村架純の歌が、このドラマの中では小泉今日子があてているというメタ構造は、「雨に唄えば」のオマージュになっている。この下りは終盤まで話が広がっていくので、脚本担当の宮藤官九郎も一押しのパートなのだろう。

この「潮騒のメモリー」を筆頭に、大友良英(最終週に鈴鹿ひろみのバックバンドのメンバーとしても出演している)による音楽が総じて良く、目と耳の両方で感じるドラマになっている点にも注目したい。

脇役を含めた全てのキャストに見どころを用意するクドカン脚本の素晴らしさ。この壮大なドラマの結末が、新聞の一面ではなく二面に載るというラストも含めて、市井の人達に対する優しい目線を感じずにいられない。そういうとこが、いちいち泣けてしまうのだ。