回想シーンでご飯3杯いける

ブラッシュアップライフの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ブラッシュアップライフ(2023年製作のドラマ)
4.2
あの世の入り口の案内人が、人生のifを体験させるという「素晴らしき哉、人生!」スタイルのストーリー。

1946年の「素晴らしき~」は、アレンジを交えながら様々な映画や小説で受け継がれ、名作も多い。スティーブン・スピルバーグのフェイバリットである事でも知られ、彼が製作総指揮を務めた「バック・トゥ・ザ・フィーチャー」も、その影響下にある作品と言える。なお、本作の脚本を手掛けるのは、案内人役でも登場するバカリズムである。

安藤サクラ演じる主人公が交通事故に遭い、案内人に「同じ人生をやり直して徳を積めば、来世も人間に生まれる確率が上がる」と告げられる。そこから始まる2周目の人生。

本作の特徴は設定そのものではなく、2周目以降に繰り返される他愛無い日常の描き方にある。小学校時代はシールの交換大会。社会人になれば昼休みに繰り広げられる上司の悪口トーク。成人式の日は同窓会気分でカラオケ。地方都市生活者のどこにでもあるような出来事が、繰り返し描写される事で、かけがえのない思い出として視聴者の心に刻まれる。それは、映画ではなく、テレビの連続ドラマというスタイルであったからこそ効果を発揮したとも言える。

この題材でありながら、終盤に差し掛かっても、泣かせるようなシーンは見当たらず、強いて言えば、ひたすらカラオケ・ルームやファミレスでの無駄話を延々見せられるだけ。それがとても心地良いと感じさせた時点で、本作は大成功なのである。まさに「素晴らしき哉、人生!」の正統進化型と言えるのではないだろうか。