回想シーンでご飯3杯いける

舞妓さんちのまかないさんの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

舞妓さんちのまかないさん(2022年製作のドラマ)
4.2
原作は漫画で、今回のドラマ版は是枝裕和等が監督・演出・脚本を担当。青森の中学校を卒業したばかりの少女2人組が、舞妓になるべく京都の屋形で奮闘する姿を描いている。

ぱっと見の印象はNHK連続テレビ小説の上位互換といった趣きなのだが、是枝監督を始めとする敏腕チームによる映像や演出の拘りが凄まじく、あっという間に作品世界に吸い込まれる。

この題材でありながら、主人公2人がなぜ舞妓になる為に頑張っているのか?を台詞で語らせないのが凄い。その代わりに用いられるのは、京都三条や祇園の屋形街の美しい風景や、京都弁で交わされる京都人の人情で、視聴者である僕達も、少女2人と同じように、この世界に愛着を感じる仕組みになっている。アスファルトには雨上がりのように水を張り、灯篭や提灯の光を反射させる。季節の流れによる日差しの強さや各種行事、食生活の変化等、京都の古い街並みだからこそ映し出せる、魅力的な光景が満載だ。

僕はこの地区にあるクラブでDJをしていた時期があるのだが、本作で描かれる街並みを、何とも懐かしい気持ちで見入ってしまった。

十代の設定である舞妓達の初々しい演技はもちろん、芸子として活躍する橋本愛、松岡茉優、女将の常盤貴子も、ベテランとしての魅力に留まらず、皆どこか天然っぽい人懐っこさを感じさせる。舞妓や屋形とは関係のない、さりげない会話、そしてタイトルにもなっている「まかない」、食生活を通じて、登場人物の心の動きを描き出す脚本が実に秀逸である。