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デューン 砂の惑星PART2のdaisukeookaのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.5
何から何まで眼福な貴種流離譚。静のシーンも動のシーンも、美術・衣装・照明・音響そして演技、全てが完璧に設計されていて隙がない。遠景でシルエットになる立ち姿のカットがかなり多いが、それらはみな「一幅の絵画」と言って良い。演者の立ち姿、姿勢、所作がため息つくほど綺麗なのだ。

シルエットといえば、逆光カットも多い。強烈な砂漠の太陽光、そのために生まれる深い陰影。陰影の中の表情、目の色、肌の質感。全てが造形的に美しくて「この人物の奥に何がある?」問いを喚起して観る側を引き込む。

そう、間違いなくSFスペクタクルなんだけど、実は王朝絵巻の人間ロマンなんだよね。星vs星の戦いは、欧州の国vs国の戦いにも読み替えられるし、教母たちの「血統を操作する」陰謀も、その辺の歴史が発想の源にある気がする。パート2を見てはじめてパート1を全部理解できた。謎の残し方もちゃんとしてる。

アクションでは、爆発ひとつとっても、爆炎の色・形・動き・音、全てが禍々しい生き物のようにデザインされている。砂漠の白兵戦は、何千人が一気にぶつかり合って殺陣を撮るわけで、合わせるだけで気が遠くなる規模。しかも闘技がいちいちカッコ良い。そしてサイコーなのは「シャイー・フルード」=砂虫に乗るシーン。ポールが砂漠の盟主になるための通過儀礼は、まるでサーフィンで波に巻かれてグルングルンにやられている最中を思い出すほどヤバかった。ここでもとにかく「目が楽しい」のだ。

そしてさらに、それらを超えて佳かったのは「戦う女たち」。チャナ(ゼンデイヤ)はもちろんのこと、ポールの母ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、イルーラン皇女(フローレンス・ピュー)、マーゴット(レア・セドゥ)、そして教母ガイウス(シャーロット・ランプリング)。この辺好きなんだよなー。万人向けの美人じゃないんだよね全員が。唯一性と強靭さが美を裏付けてる、凡百を寄せ付けないタイプの女性たち。彼女らが男どもを文字通り翻弄することで物語のドライブが生まれてる。マーゴットがフェイド(オースティン・バトラー)を誘惑するシーン、レア・セドゥは本当に美しくて凄かった。あんなの撮れるほどになってみたい。

勢力同士の戦闘(戦争)をあれだけの物量で描きながらサラッと終わらせるところもニクいし、なによりポール=ムアディブ(ティモシー・シャラメ)の葛藤と苦悩に物語を強く寄せている。ポールがチャナに永遠の愛を告げた後の「決意」が半端ない。これ原作もそうだったのかな?そしてそれを受けたチャナの行動も熱い。若さと成熟の間にいる人間たちならではの葛藤が生む熱さが物語を支えている。そして、スクリーンの中の全てに横溢する「美しさ」が、物語の熱さを増幅しているのだ。
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