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君たちはどう生きるかのdaisukeookaのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

個人的な主観と経験でしかないんだけど、宮﨑駿監督の作品への評価は良いのと悪いのが混在しているような感じがする。「ナウシカ」「ラピュタ」「紅の豚」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「風立ちぬ」は大好き。「崖の上のポニョ」と今回の「君たちはどう生きるか」は良くなかった。ポニョのときに感じた「この映画を『分からない/感じ取れない』あなたは不合格です」と画面から伝わってくる鼻持ちならないプレッシャーが健在だったのだ。

何より真人が喧嘩の後で自分を石で(側頭部から血が流れるほどに)殴ったのが象徴的。自分に悪意があることをことさら早熟に意識させている。転校した先で喧嘩した自分を戒めたのか、イジメられた自分をことさら辛く見せたかったのか、どっちにしても「自分が他の大人に・そして自分自身にどう見えるか」を意識しているように見える。そこから先の動作が全て「評価されたがっている」ように見えてしまうのだ。だから素直に感情移入できない。そんなデキた子どもがいるかよ。子どもってもっと迷うしぐちゃぐちゃしてるよ。

出てくるキャラは、どっちかというと可愛くない。インコもサギ男も正直気持ち悪い。インコなんて杉並や世田谷でペットのインコやオウムが逃げ出して野生化・巨大化したエグい奴を思い出してしまう。そしてワラワラはいかにもな表情をした媚びるような可愛さで「かえってそんなに可愛くない」。ことさら可愛いものを描かないでおこうと気遣ったんじゃないかとさえ思える。つまり「そう簡単にわかったようなことを言われたくない」「そう簡単に『感動した』『泣いた』とか言って欲しくない」という感情が画面から伝わってくるのだ。

『大叔父と彼が背負う別世界 vs 真人と彼が戻るべき現世』の構図はいかようにも読み解けるように描いてあると感じた。 少なくとも以下の2つに読み解けるように思えた。

①大叔父=宮﨑駿監督の年代の大人達 別世界=現代
  真人=現代の若者達 現世=若者達が築く未来

②大叔父=現代に生きる大人達 別世界=デジタルやITで支配された現代
  真人=現代の少年少女達(監督からみて孫・曽孫の年代) 現世=孫曽孫たちが築く未来

①ならまだマシだと思う。監督の年代からみれば50歳代だって若者だからだ。しかしひょっとして本当は②なんじゃないかと疑っている。今の60歳代~50歳代が作ってきた現代を「ロクでもないもの」と位置づけて、さらに下の「目の中に入れても痛くない」世代に期待して「真人のように果敢に生きて、自分が果たしきれなかった社会的な理想を実現して欲しい」と思っているんじゃないかと勘ぐってしまう。

真人が紛れ込む異世界は、まるで熱帯夜で寝苦しい中に見る悪夢のように、色鮮やかだけど暗くておどろおどろしい。それは監督にとってデジタルやITで支配された現代そのものかもしれなくて、あのマッチョなインコたちはそんな現代のサラリーマン社会でヒイヒイ言いながら働いているおれたちかもしれないのだ。

そんな風刺を利かせたようなわがままいっぱいの映画を何年もの期間と何千人ものスタッフ関係者と何十億もの予算を使って描いているわけで、贅沢この上ない説教だなと感じた次第。「君たちはどう生きるか」なんて実は訊いてなくて「こうやって真人のように生きなさい」と居丈高に言いつけている。やっぱり鼻持ちならない。

この映画がそんな風に見えてるのはおれだけかな?
daisukeooka

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