常盤しのぶ

THE FIRST SLAM DUNKの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.5
当時のアニメからキャストが総入れ替えとなったり全編3DCGという若干の不安を抱えながら観に行った本作。結論から言えば、原作をあまり知らない私でも十二分に楽しめる名作であった。主人公を桜木花道、ではなく宮城リョータとすることで、原作ファンでもしっかり楽しめる構成となっていたように思う。原作を崩さず、かつ原作を更に深掘りさせてくれたのは井上雄彦監督のワザマエと言えるだろう。

原作をよく知らない私からしてみれば、宮城リョータという男はいまひとつよくわからないキャラクターのひとりである。桜木と三井とつるんでいる三バカくらいの認識である。それが本作によってキャラクター造形に深掘りがなされた。沖縄生まれであり、父と兄と死に別れ、常に兄の影を追って生きていた。そんな宮城リョータという男を本作鑑賞後好きにならない人間はいるだろうか? いや、いない(反語)。ただのチビ天パ
じゃないんだねお前。

3DCGも初めて観たがあまり違和感がなかった。強いて言うなら序盤こそ違和感があったものの、すぐに慣れたというのが正しいか。『3Dを手段で取り入れた』は監督の言葉。コート上で独立した10人の動きを手で描くのは確かに現実的ではない。とはいえ、ここまで違和感なくひとつの作品として完成させられたのは監督のみならず全スタッフの情熱と魂の賜物といえる。パンフを読んでも皆が皆本作を最高の作品に仕上げようと並々ならぬ情熱を注いでいたのが手に取るようにわかる。そしてそれが言葉だけでなく結果として実を結べたのは流石という他ない。

『原作をただなぞるだけの作品にしたくない』という監督の言葉通り、原作を知っていてもいなくてもしっかりどっぷり楽しめる素晴らしい作品となっている。是非劇場で。