常盤しのぶ

ファイト・クラブの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.5
私が映画を観るようになった遠因。伊藤計劃は映画時評集の中で本作を『全肯定か、全否定のどちらかしかありません』と記している。まさしくそういう映画で、刺さる人にはトコトン刺さるし、そうでない人には何一つ刺さらない、むしろ怒りすら湧いてくる作品だと思う。ちなみに私は大絶賛。SE7EN鑑賞の時も思ったが、私はフィンチャー作品が大好きなのかもしれない。

ミステリ要素というか、序盤でほのかに抱く違和感を時間が経つにつれて丁寧に、あるいは豪快に紐解かれる瞬間がたまらなく気持ち良い。『僕』とタイラーの関係や、『僕』が体験する諸々に対してなんとなく抱く違和感、これらの真相が物語の途中で解明する。そしてまさかと思い序盤からコマ送りして観てみると……やってんなぁタイラーさんよォ!!

タイラーがコンビニのバイト君に勉強を促すシーンが地味に好き。それまで割とバイオレンスな思考で行動していた彼が見せる不意の優しさ、そのギャップに胸がときめくのです。銃で脅されたバイト君はひとたまりもなかっただろうが……。

終盤、本作に散りばめられたトリックが一気に回収される。我々は放心状態になるも、それでも物語は続き、そして最初のシーンへと帰結する。

物語のテンポや構成が見事で鮮やか! 2時間を超える作品とは思えないスピーディーな展開にただただ翻弄されます。最後、タイラーが仕掛けた特大のイタズラがよくもまぁ日本の関所を通過できたなと今でも思う。