常盤しのぶ

セブンの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

セブン(1995年製作の映画)
4.5
後味の悪い胸糞映画と名高いためなんとなく観るのを躊躇っていた。が、メチャクチャ面白かった。確かに胸糞ではある。しかしそれよりも本作を通して繰り広げられる見立て殺人のクオリティに感動した。

本作の見立て殺人のテーマは七つの大罪である。例えば最初の殺人は暴食で、被害者と共に撒き散らされている食べ物もグロテスクに映している。ここから傲慢や色欲など、見立てに沿って殺人がおこなわれていく。

本作の犯人は物語の中でほとんど情報が出てこない。被害者とどういった関係にあるのか、そもそも一体何者なのか。こちらがもどかしくなるくらいに犯人像が見えてこない。

観終わって実感したが、本作は如何にして犯人を追い詰めるのかをハラハラしながら見届けるのではなく、犯人と被害者という舞台装置が繰り広げる見立て殺人に翻弄される二人の警察官をただ観ているしかない絶望感を楽しむ作品である。最後、犯人を前にした時のブラピの顔が最高。

これを観てしまうと他の作品の見立て殺人とどうしても見比べてしまう。というより、本作に多大に影響されている作品も数多く作られているのではないか? 私なら、作ってしまうだろうなぁ。

本作は全体的に陰気なまま終始進んでいく。しかし、ただ一箇所、ブラピの家にモーガン・フリーマンを招待した時、電車の揺れで思わずみんな笑ったシーンで雰囲気がほんの少し明るくなった。私はあのシーンがかなり好き。好きだからこそ、胸が締め付けられる。明るくなったからこそ、ラストのシーンがより際立つ。本作を観終えた後、しばらく動けなかった。

胸糞映画と言われているし実際その通りである。しかしそれでも是非観てほしい。そんなもどかしい作品である。