愛車をパクられて愛犬を殺されたから復讐する、ただそれだけの映画。そこに至るまでの何から何までが魅入ってしまうほどにスタイリッシュで美しい。殺す前はスーツを着てジャケットを羽織り、殺害対象は多少モタついても確実に頭をブチ抜く。銃もちゃんと両手持ち。だからこそキャッチフレーズの『見惚れるほどの、復讐。』が心に響いてくる。
復讐のみを原動力に対象を殺害していく気持ちよさ清々しさを100分かけてしっかり見せてくれる。撃った弾は確実に命中するし、敵の位置はヒントもなく完璧に把握できる。本作のアクションは言うまでもなくトンチキファンタジーに分類できるだろう。アクションシーンをひたすらに格好良く見せるためのファンタジー要素である。だからこそジョンは敵地へ単身乗り込んでも多少の傷を負うのみで生還できる。
ファンタジーアクションの中でも銃はきちんと両手で持ち、できるだけ半身で構える。本作の影響で米軍での銃の構え方が変わったと聞いたが本当なのだろうか。リアリティラインの話をすると、これをもう少し現実に寄せるとMr.ノーバディの風味になっていくのだろう。あれはあれで好き。ジョン・ウィックはもしかしてガン=カタの習得者なのだろうか。途中からそう思って観てみると、本当にガン=カタに見えてくるから面白い。
続編を作る気はないと訴えるかのごとく物語は綺麗に収束する。しかし、今だからこそ言えるが続編はしっかりとつくられ、この度4作目が公開される。まずは次作がどのような展開が繰り広げられるか、今から楽しみだ。