横山ミィ子

THE FIRST SLAM DUNKの横山ミィ子のレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.0
主人公の桜木花道が属する湘北(しょうほく)高校と、超強豪・山王(さんのう)工業高校とのインターハイでの対戦を軸に、同時進行で湘北のメンバー、宮城リョータのこれまでを描く物語。

まずは、私自身が原作『スラムダンク』のファンであり、大甘な評価になってしまうかもしれないことは述べておきたい。原作は公式サイトによると、週刊少年ジャンプで1990年から1996年まで掲載、テレビアニメは1993年から1996年まで放映された。その間高校の同級生たちとキャーキャー言いながら、コミックスを読み、展開を見守ったことは楽しい思い出である。アニメも当然観ていたが、やはりアニメ作品と原作は異なる。理由は明白で、アニメ作品には多くの人の手が入るからで、どんなに苦労してもオリジナルからは変わってしまうのは無理からぬこと。不動のキャラクター、ミッキーマウスでさえ、アニメーションのそれと、ウォルト・ディズニーが鉛筆で描いたそれは驚くほどに印象が違う。

何が言いたいかというと、本作品では、「原作のイメージが可能な限り映像として再現されている」ということだ。『スラムダンク』はじめ井上雄彦作品の最大の魅力は、私にとって、「人物の絵とその線」であった。本作品は脚本・監督を原作者の井上雄彦氏が手がけており、だからこそそれが可能になったのだろう。

最初のうちこそ、CGの動きが気になるが、それもだんだん見慣れてくるのでご心配なきよう(笑)。そのうちに、あの原作の大きな魅力である疾走感が楽しめるようになる。自分自身がコートにいてボールを追っているような臨場感は、アニメーション表現でこそのものといえよう。

最後に、宮城リョータ、リョーちんのこれまでは意外だった、というとおかしいかもしれないが。幸せに暮らしてきた子どもたち、傷を負った子どもたち。それをつなぐものがバスケットボールというスポーツだった。原作を読んでバスケットボールを始めたという人は非常に多かったようだが、本作品も、若い人の新たな出会いになると嬉しく思う。
横山ミィ子

横山ミィ子