横山ミィ子

洲崎パラダイス 赤信号の横山ミィ子のレビュー・感想・評価

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)
2.0
蔦枝(つたえ)と義治(よしじ)という情けない男女が、終始他人の善意にすがりながら身勝手に生きていく話に思えた。他の登場人物たちも強さや成長がなかった。パラダイスと銘打たれた、特に女性にとっては救いのない街で、誰もが貧しさの中で肩を寄せ合いながら必死に生きているのはわかる。主人公たちだって社会の犠牲になっていることは察するが、そういった人々の哀しみやいじらしさが伝わってこないのだ。

これはあくまで憶測だが、時間などの関係で、原作にある部分をかなり大胆に省略したのではないだろうか。どうして二人が知り合ったのか。どうして根無草の状態になったのか。細かい描写を切り捨てて、役者のネームバリューだけで人気を取れるほど甘くはないだろう。川島雄三監督は読書家のようで(あるいは映画会社の企画なのかもしれないが)、井上靖、大佛次郎、織田作之助など文豪の作品を映画化しているようだが、あまり観る気にはならなくなっている。原作の魅力は往々にして文体が支えるものでもあり、筋書きや設定をなぞればいい作品になるわけではないのである。
横山ミィ子

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