横山ミィ子

かもめ食堂の横山ミィ子のネタバレレビュー・内容・結末

かもめ食堂(2005年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「最初はガラガラだった食堂が最後にはお客さんで一杯に。そんな上手く行くわけない」と仰る向きも。それはそうだろう、これはファンタジーなのだから。ではなぜこの映画に魅了されるか、それはストーリーや展開だけではない理想がたくさん詰まっているからだ。

これまでの人生でいろんなことがあったろう女性たちが出会い、特にお互いのことに立ち入ることもせず、なんとなく一緒にいて、一緒に仕事をする。ときどきびっくりすることはあるけれど、セクハラもなくパワハラもなく、ただ自分が本当に美味しいと思える料理を作って提供する。オフの時間にはコースのないプールで泳いだり、運動をしたり。そんな絵本のような世界に、ただもたれかかって心をほぐすことができるのだ。

とはいえ、「のんびりゆるゆる、癒される」世界を創るのは並大抵ではないことを忘れてはならない。小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、というそうそうたる役者陣。原作の群ようこは、昔から既成のイメージやステレオタイプと闘ってきた人だ。それらを素材として、荻上直子監督が自身の美意識でもって仕事した結果なのである。

自分のためにバッチリおしゃれして、でも誰もなにも話さず、一緒にただ青空を眺めてリラックスするシーンには本当に憧れる。そのときのもたいさんの葉巻の吸いっぷり!強いスピリッツを一気飲みするシーンも格好良くて痛快だった。

港町や森、また舞台となる食堂も、とてもセンスがあって美しい。フィンランドといえばのマリメッコのお店も登場するし、よい仕立ての普段着の着こなしも楽しめる。歳を経ること、それ自体楽しもうとする方にお勧め!
横山ミィ子

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