アむーレ

ファーストラヴのアむーレのレビュー・感想・評価

ファーストラヴ(2021年製作の映画)
3.7
芳根京子と北川景子の演技、すごく良かった!
迫真の演技で、面会のシーン、裁判のシーンともに引き込まれました。
面会で由紀が自分の経験も交えながら環菜と心を通わせていくシーンなんかはうるっとしちゃったし、刺していないと打ち明けた場面では「えっ!?どういうこと?」とビックリさせられるような、観ている側が登場人物の気持ちに感情移入させられる部分と事件の真相が明かされていってハッとさせられる部分=心を掴む場面と掴んだ心を突き放すような場面のストーリーの緩急・裏返しがとても良かった。

以上のような理由からストーリーの構成や展開はとても良かった・面白かったと思ったのだけれど、全体的な後味は裁判の判決も含めて重々しいダークな印象。

判決に関しては登場人物の思い描くような結果にはならなかったけれど、客観的に見たらそうなってしまうのかな。事故だったかもしれないけれど環菜が自ら言っているように瀕死の父親がいるその場から立ち去ったのは事実で、そこに過去のトラウマが重なってすぐに救急車を呼ぶことが出来なかったとしても、救命への努力を怠ったことは弁解の余地はない。そう見られても仕方ない行動だったということか。

でも、環菜の気持ちを考えると酷だよなとも思う。

そして環菜の母親の腕にもあった無数の傷。娘の腕についた傷を見た母親が「気持ち悪い傷」と言い放った意味についてもすごく考えさせられた。
母親も娘には言えない、何かがあったのだろう。その何かに悩み自分の腕に傷をつけた。その自らの行為に嫌悪を抱いて生きているから、娘の腕の傷を見たときに自分に対する嫌悪感を娘にも重ねて「気持ち悪い」と言ってしまったのかな。
むしろ同じ傷があるのなら、それを気持ち悪いと表現せずに、娘の気持ちを理解してあげることはできなかったのかなと悲しくなった。

由紀の母親だって由紀の父親のことで心を痛めていただろうし、解決したから平気とは口で言っても心の傷は消えないもの。

結果、なんだか登場人物みーんな暗い過去を持っていて、ものすごくドンヨリした空気に。
人は皆、心になにかしらの傷を抱えながら生きているんだというメッセージは分かるが、何か生きる希望のような一筋の光を示して、このダークな後味をスッキリさせて欲しかった。

心の闇と裁判の難しさを表現する社会派の作品だと思ったけど、エンターテイメントとしては暗すぎるね。
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