アむーレ

スパイダーマン3のアむーレのレビュー・感想・評価

スパイダーマン3(2007年製作の映画)
3.6
サム・ライミ版スパイダーマンシリーズ完結編。
今回のスパイダーマンの前半では宇宙からやってきた謎の生命体をきっかけに自己を支配され私利私欲を追い求めるピーターとなってしまった姿とその支配から解き放れたい心の葛藤を描いている。
他人より優越感に浸りたい、ちやほやされたいなど、ヒーローという姿からは想像できない心の裏側・心の闇をスパイダーマンというフィルターを通しながら描いていて、その中で湧き出てくる恨みからの復讐心という人間の内面的な醜さを皮肉っている作品であり、結びとしては、相手を許すこと・寛大な心の器の大きさを持つことの大事さが作者のメッセージとして感じとることができる作品だった。

ここまでのサム・ライミ監督スパイダーマンシリーズらしく、作品に道徳的テーマが感じられる点は好感が持てる。
しかし今作は街のヒーロー・スパイダーマンというよりも、ピーターというひとりの人間としての心の裏表に重点を置き描かれているので、ストーリーのスケールとしてはギュッと小さくなった印象。(映像的スケール感は逆にパワーアップしてます)

ハリーの家のお仕えの爺やよ…父上が亡くなった時のこと知ってたならもっと早くスパイダーマンが殺したんじゃないってハリーに教えてあげてよ…この証言が遅れたことにより前作までと今作においても双方に大きな被害が…(笑)

あとはスパイダーマン1作目のピーターのおじさんが亡くなった時の話など、改めて今作において進展があり、シリーズ完結編としてストーリーの深みが増したけれども、今作の悪役を生み出すための後付け感も歪めない。
メイおばさんの名言も2作目に比べると影を潜めたかな~、あんまり響かなかった。

ラストシーンにかけては色々と伏線の回収もされていくのだけれど、ハリーがMJのこと脅してピーターを傷付けたことなど、謝罪せずに逝ってしまうのは許せなかった。あれに怒り狂ったピーターがMJの店行ってグウェンと仲良くしてるの見せつけたのも悪いけど、ハリーがしたことと脅されたとはいえハリーと組んでピーターを陥れたMJも悪だと思う。
ピーターはハリーに言葉で傷付けたことを謝ってハリーは許すと言ったけど、正直ハリーもハリーだしMJもMJだわ、ピーターに謝れよ!って思ったから後味は良いとは感じなかった。

また、地球外から飛来した謎の生命体から黒のスーツが登場することにより、これが2018年に公開される『ヴェノム』にも繋がってきていますね。今作でヴェノムについては触れられておらず、特にヴェノム作品に繋がるような匂わせは一切ないんだけど、その姿形はヴェノムそのもの。
映画ヴェノムは鑑賞済みだけど、この生命体の弱点なんかもこの映画で描かれていた内容と一致していて、しっかりと繋がりを感じる。
ヴェノムって映画の主人公に寄生する前にスパイダーマン3で既に2人に寄生してたんだねって初めて知って興味深かった。


ただまあ、サム・ライミ版スパイダーマンシリーズで一番良かったのは2作目がダントツでストーリーに満足感と納得感があった。
スパイダーマン3は色々と盛り込みすぎたかな。
スパイダーマン2だけで言えばアメイジングスパイダーマンシリーズよりも面白かった印象。
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