アむーレ

志乃ちゃんは自分の名前が言えないのアむーレのレビュー・感想・評価

4.0
吃音症に苦しむ女子高校生にスポットを当てたドラマ映画。

ぎゅっと胸を締め付けられる映画だった。
でも主人公の気持ち、すっごく分かる。自分は吃音症ではないけれど、根暗な部分があるの自覚しているから、心が許せる人がいるととことん仲良くできるけどそこにいくまで時間がかかるタイプ。志乃ちゃんも同じで、仲良くしていた友だちとの輪の中の外から違うものが混じってくると溶け込めなくなっちゃうんだよね。それなら私が一人になれば苦しまない。
…だけどそうしている自分のことをすごく腹立たしく感じてくるし、悲しくなっていく。ますます殻に籠って鬱になっていく。そんな葛藤といつも闘っているんだよね。

でもそうした自分を変えるには勇気も必要で、催眠術なんかで解決できるもんじゃない。
最後の文化祭での演奏シーンでは、加代の志乃に対する最大限のエールだったと思う。

「魔法をください、魔法をください、皆と同じに喋れる魔法、皆と同じに歌える魔法」

「魔法はいらない、魔法はいらない、皆と同じに喋れる魔法、皆と同じに歌える魔法」

この歌詞に自分を変えられるのは魔法じゃなくて勇気なんだ。というメッセージを感じたし、志乃のことを指す「皆と同じに喋れる魔法」だけでなく加代自身の欠点を指す「皆と同じに歌える魔法」と、「しのかよ」2人を同列に並べて歌っているのが印象的だった。
その歌の力に背中を推されるように志乃は加代に向けて決意表明で返答するんだけど、志乃の乗り越えようと本気になった姿は胸に響いたなぁ。

そんな姿を見たからなのか、今度は校舎裏ではなく教室で昼ご飯を食べることを選んだからか、クラスメイトが教室で飲み物をくれた。「ありがとう」と笑顔で返す志乃。
まだ吃音症は完全に克服はされてはいない様子だったけど、吃音症という病気を理解する作品になったと同時に吃音症に悩む人の背中を推す作品でもあったと思う。

その後の志乃の様子は視聴者次第というところだけど、志乃ちゃんはこれからも少しずつ努力して気の許せる仲間を少しずつ増やしていって、また加代と一緒にバンド組んだんじゃないかなと想像します。
加代がキクチに向けて「またいつかやろう」と言っていたシーンがあったし(※キクチと一緒にやるには志乃が一緒に歌うことが大前提)、少しずつ努力して克服していった志乃ちゃんは今度はキクチが輪の中にいても大丈夫な気がするよ。

見るからにかなり低予算で作られた作品だと想像するけど、そんな中で素晴らしいキャストによる演技と演出でハートウォーミングな素敵な作品になっていたと思う。

加代は良い奴だな。志乃の決意表明を聞いた加代の目の奥が優しさに満ちていた。
ああいう友だち大切にしたい。
アむーレ

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