daisukeooka

トップガン マーヴェリックのdaisukeookaのレビュー・感想・評価

4.8
単なる「トップガンという題名の映画」ではない。「トップガンを描いた映画」でも足りない。この映画そのものが「トップガン」なのだ。関わる全員が自らを鍛え、全力で課題に取り組んでいて、良きチームを築き、エンタテインメントの孤高たるこの映画を作り上げている。そう「エンタメ映画としての総合力」が言葉に尽くせないほど圧倒的に強い、数多くのエンタメ映画の頂点の、さらに上にいる映画だ。

冒頭のシークエンスからしてカッコ良すぎる。空母の甲板員のジェスチャーとF-18の発進が交互にカットバック、スピードとリズムはまるで高度なプロスポーツ。この「動感」が「アメリカ」なのだ。戦闘機なんて、この世に実在する「カッコ良いモノ」の代表だ。それを最も存分に描けるのが「映画」という媒体だろう。画面のデカさも音響も映画館の環境であってこそ、戦闘機が飛び交うこの世界を自分事にできる。「『映画』って何だ?」と訊かれたら、真っ先にこの映画を挙げて良い。観てるこっちが戦闘機になって空でも飛べる!と思わせるほど迫ってくる。

画と迫力だけでなく、脚本や人物への洞察も「これぞ映画」だ。グースを失ったマーヴェリックの悔恨は世代を超えて、彼を孤独のままにする。けれど人生の波がグースの息子・ルースターとマーヴェリックを出会わせて、運命に対峙させる。普遍であり王道の英雄譚だ。

序盤のフリを終盤の危機でウケさせる。観る側の先読みがハマった時の気持ち良さったら無い。けれどそこここにスリルポイントは隠されていて、そう簡単に大団円には辿り着かない。マーヴェリックは生き延びるのか、それとも自らと引き換えに次代に使命を託すのか。

マーヴェリックが「大人になっている」のに感じ入った。言葉や態度でなく、一度目はペーパーで、二度目は身体を張って、問題への最適解を示す。その表情は穏やかで、かつ静かな決意に満ちている。彼はただ上官=「人」に従っているのではなく、その先にある「期待」に応え「使命」を果たそうとしているのだ。86年にオリジナルの「トップガン」を観て熱狂していたおれたちは、そんな大人になれているだろうか。

そして「敵」を「ならずもの国家=絶対悪」に設定することで、死を目前にした生々しい戦闘を「冒険」に昇華した。向き合う敵は無機的な第5世代戦闘機で、サインは読めない言葉は通じない。この「敵の描き方」が倫理的に正しいかどうかは、この映画において論じる問題じゃないと思う。「生存」を第一目的におけば、迷わずに敵を叩くことも、その場に立つために志願し鍛錬することも、誰かがやらなきゃならない大事な役割なのだ。

空戦シーンは本当に歯を食いしばって手を握り締めて身体もよじってしまうような強力な仕上がり。一緒に観たパートナーも「ぅい〜〜〜ってしてたわ」と言っていた。まるでテーマパークのライド、それがシーンの尺分続くのだ。

80年代の栄光は遠く過ぎ、中国もイスラムも勃興してきてロシアも暴れて世界は分裂してきてる。そんな中にこの映画が旗印として立ったのには意味があると思う。「世界に大前提としてあるべき【自由】それを守るために戦う」というアメリカ的価値観が、その旗印だ。その価値観が、こんなに洗練された大作映画になって、またも世界中に伝播する。

愛も家族も友情も戦闘アクションも描いていて、オレたち世代を鼓舞する力に満ちている。オリジナルを知らない若い世代はどうなんだろう?受け取る重みはどうしたって違うのかな。感想を聞いてみたいもんだ。とりあえずオリジナルを見返したい。あとやっぱり身体鍛えないとな! トム・クルーズはやっぱり大スターだ!
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