アむーレ

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のアむーレのレビュー・感想・評価

3.6
第二次世界大戦でナチスドイツがベルギーを陥落させ、フランスも陥落寸前、イギリスの本土決戦も覚悟かという崖っぷちの中イギリスの首相となった第61代英国首相ウィンストン・チャーチルの政治判断の葛藤を描いた作品。

まずこの作品の原題は『最も暗い時間』であり、まさしく戦争でのむかのまれるかの崖っぷち状態の非常に難しい舵取りを迫られるタイミングでのチャーチル首相の葛藤を描いており、邦題の『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』というまるでヒーロー映画かのような超ポジティブネーミングの内容とはてんで違うことを申しておきたい。

当時のイギリス議会ではドイツとの融和政策を進め自国の安全保障を優先に考えようという勢力と、徹底抗戦勢力に二分されていたが、和平を結ぶ融和政策で侵略を防いだとてナチスドイツに屈伏し傀儡政権となって怯えながら生きていく道を選ぶことが果たして私たちが望む国の在り方なのかと訴えたチャーチルの声が国を鼓舞させイギリスは戦う道を選んだ。

あくまでイギリスにとっての開戦前夜を描いた作品でありその後の勝利までの道のりは全く描かれていないので、邦題の『ヒトラーから世界を救った男』というのは盛り過ぎかなと思う。実際、その後はイギリスだけでなくアメリカも参戦してあの有名なノルマンディー上陸作戦などを制した連合軍が巻き返して行くので、世界を救ったのはチャーチル1人ではないかなと。


日本と同じ立憲君主制を持つイギリス王国。
同じ第二次世界大戦前夜の国王を描いた『英国王のスピーチ』で登場するジョージ6世も登場するので、話が繋がってくるのがとても面白いし興味深い。

このジョージ6世の助言もあり、電車に乗ったことのないチャーチルが初めて1人で地下鉄に乗り生の国民の声を聞き融和か徹底抗戦かを決断する。この電車に乗る行為自体は本当にあった話なのかはわからないけど、色んなシミュレーションをした上で国の将来を考え決断したことだろうし、この決断は勇敢であり正しい道だったと思う。

残念ながら敗戦国となってしまった立場ではあるが日本も第二次世界大戦では最後まで徹底抗戦を選んだ国としてその決断には理解できる。(※日本は大戦のきっかけを作った侵略した側だと主張する声もあるかもしれないが、当時の日本に置かれた外国の対日政策の結果戦争へと突き進むしかなかった状況の有無の見解や、実際に日本本土が戦場となり受けた無差別な空襲などの非人道的行為に対して徹底抗戦した点なども受け、ここではその「国を守る為に戦う」決断をしたという点において「理解できる」と表現します。)


ただまあ、この映画作品のストーリーを大雑把に表現するならば、『ドイツ軍が目の前に迫っている中首相に就任したチャーチルが和平か徹底抗戦か悩んだ結果戦うことに決めた!』っていう話なので、展開としては薄いよね。

イギリス国王との交流の中で、実際に国王が始めはチャーチルに疑心暗鬼になっていたけどだんだんと理解が深まっていって最後は味方になるっていう流れだけど、その気持ちが変化していった根拠が具体的に描かれていないから唐突に感じたし、チャーチルの奥さんの役割ってのもチャーチルにとってどんな存在だったのかがイマイチよく伝わらなかった。
だから最初は国王にも嫌われ仲間にも嫌われひとりぼっちみたいに描かれてて、ラストの宣戦布告に舵をきる政治決断のシーンに向けて一気に手のひら返しの急展開みたいに皆がチャーチル支える側についたように表現してるのが違和感ある帳尻合わせに感じてしまったのよね。
もっと、その周りの人たちの心の変化を丁寧に描いてほしかったかな。

あと、国民から小型船舶狩りしたあとの展開が描かれてないけど、その船使って救助に向かって本土に一度戻りそこから立て直してドイツと戦ったのか、それとも救助やめて海軍、空軍どんどん送りこんでイケイケドンドンで攻めていったのか、そこの話くらいは回収してほしかったかな。
船集めて行かせといて話広げっぱなしで終わりはモヤモヤするよ。
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