知人からすすめられて何の予備知識もなく鑑賞したところ、『チェイサー』のナ・ホンジンに匹敵する衝撃だった。
アフリカ系アメリカンの主人公クリス(ダニエル・カルーヤ)は、彼女(白人)の実家に招かれる。人里離れた郊外に屋敷を構える裕福な家庭だったが、気がかりなのは彼らが黒人である主人公をどう受け入れてくれるかだ。
表面上は手厚くもてなしてくれているものの、「なにかがおかしい」(これ以上ないくらいの完璧なキャッチコピーだ)
後半が悪いってわけじゃないけど、見所は前半。
冒頭の不穏な映像から、ひげ剃りでの出血、鹿との接触事故(警官の差別的対応がラストの見事な伏線になっている)など不吉な予兆で煽る序盤。
中盤はあまりに不気味なことが起こりすぎて逆に笑えてくるんだけど、会話内容と表情の不一致を使った高度な演出、部外者をコメディリリーフに使ったガス抜きもあって退屈しない。
後半についてはネタバレになるので伏せておく。
いやしかし律儀に主人公の職業設定を活かしてきたりもするからね。たぶんヒッチコックの『裏窓』好きなんだろうけどさ。
ほんとによくできた映画だった。「人種差別?あー社会派ね」みたいな先入観で危うく見逃すとこだったけど、ひさびさにガチンコクラシックサスペンスを堪能できて大満足だった。