asayowai

ブレードランナー 2049のasayowaiのネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

30年ぶりの続編。色んな意味で時代が『ブレードランナー』に追いついたということでしょうね。個人的にはそれほど好きな映画ではなく、3時間弱ってなげえな・・・、と敬遠していたけど反響にまけて結局みた(しっかり前作予習して)。


リドスコ版の猥雑な空気感はなく、だいぶ洗練された映像設計だけど、ノワールっぽい気だるい陰鬱さはしっかり引き継いでいる。


案の定デッカードの話はわりとどうでもよくなってしまい、K(ライアン・ゴズリング)とJoi(アナ・デ・アルマス)の哀しい物語に魅せられてしまった。

顔のパーツひとつで“レプリカントと人間の間”を演じるライアン・ゴズリング。旧型ネクサスから共感能力が大幅に向上した設定どおり、感情移入しやすいキャラクターに仕上がっている。


前作では視覚が重要なモチーフになっていた。冒頭の眼のアップはリドスコ自身が語るように1984の監視社会を意識したものだし、VK検査、レプリカントの記憶と写真、そして眼を潰されるタイレルの最期など、随所に「視ること/視えないこと」のモチーフが出てくるけど、続編である本作では触覚的なモチーフが追加されている。


Joiが初めてKと外出する場面、ホログラフィーである彼女が雨に「触れる」瞬間、その映像が乱れてかすかな音をたてる。

またJoiと娼婦マリエッティ(マッケンジー・デイビス)が同期してKとはじめて抱き合う。

Kの記憶をめぐるキーとなるアイテム、木馬。この木馬はブレードランナーの世界では貴重品の木で作られている特別なアイテムだが、その質感を確かめるには触れる以外にない。


Kは人間から侮蔑をこめてskinnerやskin jobと呼ばれる。字幕では「人間もどき」と訳されていたが、語源に近づけてくどく訳せば「皮=上っ面だけしつらえた紛い物」といった意味だろう。

単なる慣用句といってしまえばそれまでだが、互いに“中身”を追い求めるKとJoiの物語を踏まえるとまさに“皮肉”としか言いようのない言葉だ。


Kのラストカットはこうした触覚的なモチーフを締めくくるにふさわしい最期だった。CM作家としてキャリアをスタートさせた生粋の視覚人間リドリー・スコットに対するドゥニ・ヴィルヌーブのささやかな挑戦状として楽しく鑑賞できた。
asayowai

asayowai