横山ミィ子

震える舌の横山ミィ子のネタバレレビュー・内容・結末

震える舌(1980年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

(2022/11/26追記)
破傷風にかかった子供、その家族の看病と疲労、病院スタッフの闘いの日々。

子供が「普段の食事ができない」というところから始まる。病院で診察を受けても、しつけによる心因性のものではないかという診断。しかし実際には深刻な、致死率の高い病気の病状であった。

ドキュメンタリーに近いと思えるくらい、リアルで残酷な発作の様子とそれへの対処、状況が描かれる。血に弱い方は、ご覧になるには注意を要すると言っていいだろう。私は体験したことはないが、日々の医療現場で、こういう場面は日常茶飯事なのだと思う。突然のハプニングや交通事故、薬害、公害。そういった現場での患者さん、ご家族、医療従事者の絶望感と疲労、努力を、野村監督はフィクションとして見事に描いている。緊張感を保ち、それでも最後まで応援し続けられるのは、ベテランの役者陣の仕事によるところも大きいだろう。

実際には短い期間でも、関わる人たちには相当な長さである。こういった局面は誰にでもあることで、お互い助け合うことが大事であることも教えてくれる。また、医療従事者の皆さんに感謝するには、拍手ではなく、大人の節制が大事であることも。

ところで、本作品が「ホラー」としてカテゴライズされていることに驚くというかショックを受けている。医療従事者の方々はこういう凄惨な状況で日々闘っておられるはずで、この話でも主治医の十分な待遇と休息、人員確保がなければ、子供は助からなかったかもしれないのだ。人命を救うためにどういうインフラが必要か。フィクションではあるが絵空事ではないのである。
横山ミィ子

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