「ええっ!?ラーメンもうないの!?まだ8月だよ…!?」
過酷な環境の南極で、明るく楽しく、時にはケンカしながら暮らす8人の観測隊のお話。
企画としては観測隊を扱うだけでも十分成立するのに、あえて「料理人」に焦点を当てたのが素晴らしすぎる。せっかく伊勢海老があるのにみんながワーワー言うせいでクソデカエビフライにしちゃうのは笑ったし、限られた素材で四苦八苦する堺雅人がいい意味で不憫。夜中にラーメンを食べる人が続出したせいで備蓄がなくなり、灌水を発明して麺を作り出すくだりも好き。オーロラそっちのけでラーメンに夢中になっちゃうのは人間を表してるなあと。なんでおっさん8人が楽しそうにしているだけなのに、こんなに見てる側も楽しいんだ。
マイナス70度の世界で、狭い施設に男8人。相当キツい環境のはずなのに、麻雀・野球・ボウリング・カクテルバー・お誕生日会・フランス料理のディナー会など、様々な娯楽とイベントを発明して明るく乗り切っているのが良い。これは飯テロ映画であり、擬似家族ものであり、人間讃歌でもある。限られた物でいかに楽しむかという部分は、漫画の『ハンチョウ』にも似ている。本音を言えばみんな帰りたいし、水も満足に使いたいんだけど、そういう悲壮感のあるシーンもコミカルに描かれるのでニヤニヤしながら見れてしまう。
本編を観終わって、「できれば帰ってからみんなでビーチバレーやるくだりも見たかったなー」とか思ってたら、エンドロールの映像で出てきて激アツだった。最後、みんなで裸で撮った写真で締めるのも好き。
これは傑作。脚本も書いてる沖田監督はマジで凄い。
以下、セリフメモ。
「ここドーム基地で一番大事なものは、間違いなく水である。水たまりさえないこの場所では、水は作らなければならない」
「♪エッビフライ エッビフライ」
≪1分740円 使いすぎは身の破滅!≫
「妻とは毎回大モメよ。これ以上子供をほったらかしにするんだったら、こっちには覚悟があるって。やりたい仕事がさぁ…たまたま南極でしかできない仕事だっただけなんだけどなぁ」
「南極では6月頃になると太陽が姿を見せなくなる。極夜と呼ばれるこの時期は、ほぼ一日中基地は闇に覆われる。6月下旬になると、世界中の基地が南極の冬至を祝うミッドウィンター祭が行われる」
「あいつ絶対ズル休みですよ。キツいのはみんな一緒でしょ。不公平ですよ!」
「まぁああいう奴もいるさ」
「西村くん、僕の体はね。ラーメンでできてるんだよ。ラーメンが食えないとなると、僕はこれから何を楽しみに生きていけばいいんだろう。麺とスープがあれば、
他に何もいらないから…」
「何やってんの?」
「なんか…最近バターが美味しくて…ハハ…」
(彼女との電話で)「あのさぁ…好きな人できた」
「西村くぅん…ラーメンだっ!!アッハッハッハッハ!」
「どちらにお繋ぎしましょうか?」
「あなたと話したいんです。毎日声を聞いてました。結婚してください!」
「でっかいオーロラが出たよ!隊長、観測しなきゃいけないんじゃないの!?」
「オーロラ?(ラーメンがあるのに)そんなもん知るか!」
(帰国後に)「KDDインマルサットオペレーターの清水ですが…」
≪髪を切り、髭を剃ると、目の前に現れたのは、どこにでもいるただのおじさんの顔だった。当たり前のように水が使えて、当たり前のように外に出かけたりすれば、ますます分からなくなっていく。果たして自分は本当に南極になんて行ったのか。≫