ヒデ

aftersun/アフターサンのヒデのネタバレレビュー・内容・結末

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「同じ空を見るってステキ。たとえば遊び時間に空を見上げて、太陽が見えたらパパも太陽を見てると思える。同じ場所にいないし、離ればなれだけど、そばにいるのと同じ」

11歳の少女・ソフィと父・カラムのひと夏の思い出。夏休みから20年後、父と同じ年齢になり当時のビデオを振り返ったソフィーは、その頃気づけなかった父の葛藤に思いを馳せる。

なかなかにヘビーな作品。パッと見ると親子の爽やかな思い出の映像だけど、所々に父のフラッシュバックや苦悩のシーンが入り、不穏さを感じさせる。特に父が真っ暗な海に駆け込んだシーンは象徴的。これ多分お父さんは別れた後に死んだってことよね…?

早く大人になりたいソフィの苦悩と対照的に、「なりたい大人になれなかった」ことに苦しむカラム。

幼い頃両親から愛されなかったトラウマを引きずり、20歳で子供ができてしまい、故郷エジンバラを離れてからは金欠でギリギリの日々。良き親であろうとするほど、自分自身の足りない部分と向き合わなければならなくなる。

二人の思い出の中でも父としてカッコいいところを見せられていないシーンが多く、ホテルの部屋の予約を間違えたことに始まり、寝息を立てているソフィの後ろで1人タバコを吸い、ご飯代を払えずその場から逃亡し、水中ゴーグルを無くしたことで機嫌を悪くする。挙げ句の果てには人前で頑張って歌を歌った娘を褒めずにケンカしてしまう。こういうポカを繰り返すダメダメな部分は実に人間らしい。

それでもソフィは父カラムが大好きだった。

彼女が太陽のように明るく接してくれることで、よりカラムの苦悩の影の部分が濃く映し出される。あの日見えなかった父の葛藤は、大人になったソフィには少し見えるようになった。これは大人になり"影"を知った彼女が、当時の記憶を辿る物語なんだと思う。

Aftersun(アフターサン)ってどういう意味なのかと思って調べたら、「日焼けした後に塗る保湿ローション」って意味なのね。ソフィにとってのこの作業がまさにこれなのかも。


以下、セリフメモ。


「私は11歳になったばかり。パパは130歳だけど。131歳になるよね。あと2日で」

「11歳の時、将来は何してると思ってた?」

「パパは元気よ。時々ニンジャみたいな変な動きをするけど」

「なぜママに"大好きだよ"と?別れたのに」

「投げたの知らなかった。潜水マスク。高かったんでしょ」

「昨日は楽しかった?」
「楽しかったわ。マイケル、あのバイクゲームやった子。あの子がキスしてきて、私もキスしたの」

「なんでも話していいんだよ。男の子やドラッグのこと」
「やめてよパパ」
「いいんだよ、パパもやったし。やりたくなったら相談してくれ」

「休暇は楽しかったかい?」
「うん、今までの人生で一番」

≪ソフィ。愛してるよ。忘れないで。パパより。≫
ヒデ

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