常盤しのぶ

ジャズ・シンガーの常盤しのぶのレビュー・感想・評価

ジャズ・シンガー(1927年製作の映画)
3.0
『待ってくれ、待ってくれ、お楽しみはこれからだ!』という映画史上初の台詞で有名な本作。分類としてはサイレント映画の中で演出としてトーキーを使用した、という趣である。さすがにいきなり全編トーキーは難しいか。

ストーリーは厳格な父と夢を見る息子との対立というよくある展開。初トーキーの題材として歌をテーマにしたと思われる。確かにトーキー部分である主人公のピアノ演奏と歌唱シーンはなかなか見ごたえがある。冒頭の台詞の後で軽快に始まったそのシーンで当時の観客は大層驚き、興奮したことだろう。

主人公の両親は、今となっては毒親として評されてしまうような人間である。しかし、それはあくまで現代での評価である。100年も前の厳格な家庭ともなれば父の威厳が最優先であることは想像に難くない。宗教が絡んでくるならば尚更である。だが、それを加味した上でも両親のあまりのしつこさに思わず笑ってしまう。事あるごとにジャズシンガーを辞めるよう諭してくる様子があまりにも滑稽で、そういう風刺映画なのかとさえ思えてしまう。

結末もジャズシンガーが司祭かを選べ、みたいなよくある感じ。ここもかなり豪快、というより、そんな手を使っていいのかとまた笑ってしまった。映画史の記念碑的作品のため、一度観ておけば雑談ネタのストックにはなると思う。