EnzoUkai

正義の行方のEnzoUkaiのレビュー・感想・評価

正義の行方(2024年製作の映画)
4.3
昨年放送されたNHKのドキュメンタリーの劇場上映版。
NHKの本放送も2部に分けられほぼ3時間の尺で放送された。上映時間を見たら158分だから幾分縮められてるように思えるが、テレビ放送に無いインタビュー分が追加されてるそうで、それはそれで非常に興味深い。

NHKでも再三再放送されたから次にいつテレビ放送で見られるか分からないので、もし興味がある方はこの劇場上映をお見逃しなく!

このドキュメンタリー、飯塚女児殺人事件を題材にしている。
九州地方、特に北部九州地方に住む40代以上の方はかなり記憶に残っている事件だと思う。
既に犯人と目され逮捕された久間三千年氏は処刑され、この世には居ない。
事件から2年のスピード処刑だ。
当時、連日の報道で逮捕された久間三千年氏は悪逆非道の徒として世間には受け止められた。現に私もそう信じてた。
刑執行がわりかし早かったこともあっていつしか世間はこの事件を忘れかけていた。とは言っても、派手に恐怖の事件として刷り込まれてたこともあって、実際はそんなに人々の記憶の奥底から消え去ることはなかったと思う。定期的に後追いの報道はされていた。ただ、その報道とは防犯意識向上の為の材料になることが多く、あくまで事件ありきの報道が多かったのだが、時折り事件へ向けられる疑問符が目につくようになってきた。
私自信は意外とそういうのは目ざとい男で、「もしや?」の疑問が年々大きくなり、興味も増大していく。
そして、一昨年とうとう西日本新聞が一大特集記事を連載し始める。
この記事は衝撃的で、断定こそはしないがもう冤罪ですよと言わんばかり。
その記事には自社の取材にも大きく疑問は呈し、そして、内省にも大きく文字を割いていた。

この映画はその西日本新聞の連載と呼応するかのように事件の詳細が描かれる。
恐らく、北部九州の報道機関は一斉に自らの贖罪(これはこの言葉が正しいかどうか正直分からない)に舵切りをして、タッグを組んで検証しようということになったと思う。
私の使った「贖罪」という言葉に関しては、是非ともこの映画を見て考えてみていただきたい。

飯塚事件について、あまり知らない人が見たら本当に衝撃だと思う。
また、飯塚事件を知ってる人で久間三千年氏の処刑で事件が終わってる人にとってはもっと衝撃だと思う。
インタビューとは言葉を捉えるだけではないってことがよく分かる。
インタビューされる側が言外に何かを訴えるのを見ているこちらにはっきりと分かる。
この衝撃体験をして貰いたい。

あ、去年流行ったテレビドラマ『エルピス』は間違いなくこの事件を参考にしてます。何故かテレビには参考資料として挙げられてないのが、然もありなんってところですがね。
EnzoUkai

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