“MizoguchiからHamaguchiへ”
今年公開の日本映画の中で一番楽しみにしていた本作
長いオープニングショットから、まるでゴダールのようなタイトルバックでこれは素晴らしい作品だと確信
それは『ドライブ・マイ・カー』のオープニングを観たときの感覚と全く同じ
そこからの106分間、思う存分濱口ワールドを堪能しました
本作の企画は『ドライブ…』で音楽を担当したシンガーソングライターで作曲家の石橋英子さんから、コンサートのバックで流す映像の製作を頼まれたことがきっかけとのこと
なので本作のベースは映像で物語は後付、そこに濱口流の脚本と演出が乗せられどこかフランスヌーヴェルヴァーグ的な香りのする作品に仕上がっています
その製作プロセスは渋谷区の公衆トイレのプロモーション映像の企画から始まった『パーフェクトデイズ』のよう
もともと興行目的でないところから作家の才能で次々と名作が生まれるのは興味深いと同時に、どこか今の日本映画界の現状について考えさせられるものがあります🤔
そんなゆるい条件がゆえに苦労も多かったとは思いますが、濱口監督はその分自由に様々なことをやってそれを楽しんでいるように見えるのもどこか微笑ましい😊
まるでドキュメンタリーを見ているような長回しによる物語への没入感
様々な光の撮り方も印象的(おそらくレンズを色々と変えている?)
違和感さえ感じさせる場面転換にもかかわらず物語を途切れさせない編集と脚本の妙
『ドライブ…』と同じく車内(密室)での会話とそこから映し出される車窓の風景
不安を煽る様々な音と緊張感を強いる石橋氏の劇伴
時折挟まれるユーモア
そして最後に放り込まれる不条理とも思える突然の出来事
それはひどく観客を戸惑わせますが、あえてそうすることでそれまで過剰と思えるほどはられていた伏線を思い出しながら、この物語は観客の中でそれぞれの物語として続いていきます
これもヌーヴェルヴァーグっぽい
濱口監督は間違いなく、今後の日本の映画界を背負っていく逸材の一人
これからもどんな作品を私達に観せてくれるのか
期待が高まります✨
p.s.
少々気が早いですが、来年のアカデミー国際映画賞ノミネートもあるような気がします
そのためには日本映画製作者連盟の推薦が必要
独立系の本作が大手映画資本で構成される同連盟から推薦されるのには様々なしがらみと思惑が絡むとは思いますが、日本の代表作として自信をもって推薦されればいいなぁと思います
『ドライブ…』のように海外からの逆輸入評価で推薦することにならないよう
カッコ悪いし😅