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哀れなるものたちのIKUZAGIEのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
昨年、映画のキービジュアルをフル帯にした原作小説を書店で見て即購入。「なるほど女性版フランケンシュタインか」と簡単にいえば怪奇小説で片付けられるが、物語のテーマは様々な要素が積み重なって、一言では全く言い表せない。「これは一体どんな映画になるのだっ?!」と半ば興奮気味に読み終わり、映画の予告も極力避けるようにして劇場公開を大変心待ちにしておりました。
すると何という事でしょう。映像に関しては想像の斜め上を行ってました。19世紀後半のヨーロッパが舞台のはずが何とも奇妙で珍妙な世界観。滑稽でちょっと不安になるような音楽もとても面白くて、ヨルゴス・ランティモス監督の手に掛かれば、映像も音楽も、こうも摩訶不思議なものになるのかと大変満足しました。また、物語の主役ベラ・バクスターを演じたエマ・ストーンも凄まじかった。特に序盤の赤子の脳を持つ成人女性の演技は面白かった。
原作を読んだ方であれば、物語の結末については賛否あろうかと思いますが、とあるおとぎ話のひとつの結末としたら、映画のような終わり方も悪くないと思いました。それよりも、物語を通じて、観る人によっては様々な価値観が覆るような内容でもあるかと思うし、例えば「知能は高いが純粋無垢で何の価値観も持たない成人女性が19世紀のヨーロッパに存在したらどうなるか」という実験過程を見る感覚で鑑賞しても面白いかもしれません。いづれせよ、映画『哀れなるものたち』は、急速に成長する一人の女性の物語であり、その内容はとても奇妙で美しくてグロくて滑稽で、好き嫌いはあると思いますが、何とも不思議な大人のファンタジー冒険映画となってました。映画ファンならとりあえず観た方が良いと思うが、18禁であることを忘れずに、何かを覚悟の上で鑑賞することをオススメします。(場合によっては不快に思う人もいるだろう…)
最後に、お話としては、個人的には原作小説の方が面白かった。原作には映画では描かれてなかったもう少し先の結末があって、そのラストの展開には驚愕しました。興味ある方は原作の方もオススメです。
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