IKUZAGIE

ネクスト・ゴール・ウィンズのIKUZAGIEのレビュー・感想・評価

3.2
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』や『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティが監督・制作・脚本・出演。タイカ・ワイティティらしいおふざけもあって、なかなか面白かった。内容は、アメリカ人の鬼コーチが文化も価値観も異なるサモアで、サッカー代表チームの監督をするという実話を基にしたスポーツコメディ。基本的にはダメチームを勝たせるために奮闘するという、スポーツ映画によくある話ですが、サモア人の気質や文化を知ることができるのでその辺は良かった。中でも、W杯予選でプレーした初のトランスジェンダー、ジャイヤ役を演じたカイマナ(俳優名)は一番印象に残りました。
観賞後、サモアのトランスジェンダー、「第3の性」と呼ばれる“ファファフィネ”についてググってみました。“ファファフィネ”とは、男性に生まれながら女性として、あるいは女性のように生きることを選んだ人たちの事。西洋社会で言う「性的マイノリティ」とは一線を画し、サモアの伝統的な文化に根ざした独自のアイデンティティーを持つのだそうです。簡単にいうと、昔からサモアでは、トランスジェンダーとして生きる男性も文化(社会)の一部として受け入れられていた、という事なのだろう。
ついでに、映画の舞台であるアメリカ領サモアについても簡単にググってみた。サモアには、サモア独立国とアメリカ領サモアと二つのサモアがあるそうです。紀元前1000年ごろには既にサモア諸島に人が住んでいたらしく、18世紀になるまでサモアはヨーロッパの探検隊に知られていなかったが、1899年には西サモアをドイツが、東サモアをアメリカが領有したそうです。その後、1962年に西サモアは独立したが、東はアメリカ領のまま現在に至る。ちなみに、アメリカ領サモアの住民の約9割がポリネシア系サモア人だそうです。当然ながら、西洋の植民地になる前からサモアには独自の文化や価値観があるわけです。
エンドロールを最後まで観れば、タイカ・ワイティティ自身がこの映画で伝えたかった事をセリフでそのまんま伝えてくれますが、もう一つプラスアルファで、サモアの文化や価値観、特に“ファファフィネ”についても伝えたかったのでは?と勝手に推察しました。
映画は正直平凡と言えますが、観て損はないし、今後配信されるようなら是非お勧めしたい映画ではあります。
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