「君は、本当は、いい子なんだよ」
名作ベストセラーのアニメ映画化。昭和15年の自由が丘を舞台に、黒柳徹子の学校生活が描かれる。
最後の方、とても泣けた。まさか泰明くんが死んでしまうとは…。理由は明示されなかったけど、持病の小児麻痺からくるものだったんだろうか。教会でのお別れシーンがとても切ない。みんながいなくなった後も残り続け、赤い花を渡すトットちゃんが健気。
序盤(昭和15年)はとにかく天真爛漫なトットちゃんの様子と泰明くんの交流が描かれ、明るくピュアに楽しめる。泰明くんと力を合わせて木に登るくだりや、二人で自転車に乗って父の練習を見に行くくだり、水に入ることを拒む泰明くんを素っ裸でプールへと連れて行くくだりはとても良かった。町の人々や家族の表情も明るく、両親は洋風の格好をして朝はパンとコーヒーを飲み、何不自由のない良い暮らしを送る。たびたび出てくる昭和15年の自由が丘の様子もエモい。(めっちゃ時代考証しっかりしてた)
トモエ学園で初めて自分の居場所を見つけたトットちゃんと、トットちゃんと出会ったことによって初めての経験を積んでいく泰明くん。泥んこになって帰ってきた息子の服を見て、静かに泣くお母さんのシーンは泣けた。
後半(昭和16〜20年)は対照的にどんどん戦況が悪くなり、配給の少なさに苦しみ、かつて豪華だった学校のお弁当も梅干しだけの日の丸弁当に。華美な服装を禁じられ、街中で母が警官に咎められて父と口論にも発展してしまう。たびたび映る足のない軍人や戦争ごっこを少年たち、そして出兵の見送りシーン。日本がどんどん暗い方向へと向かって行くのが分かる。しかしそんな中でもトットちゃんと泰明くんは明るくいようと努める。雨の中、水たまりに足を突っ込んで"噛めよ噛めよ"のリズムをとる泰明くんの行動にグッときた。
戦争という過酷な現実の中で、子供の意思を尊重して大切に育てる小林先生と、健やかに育っていく子供たち。ちょくちょく入るリアルタッチ(または特殊タッチ)の幻想アニメが印象的。こんなに明るく戦争の残酷さを描く物語ってなかなかないのでは。自由な教育で「正しい明るさ」を子供達に伝えようと徹した小林先生も、当時はかなり差別を受けたのだろう。子供達が「トモーエ学園、いい学校!」と他校のいじめっ子たちに言い返しているところで、小林先生が肩を震わせているシーンが泣ける。
黒柳徹子の見え方がかなり変わる作品なので一見の価値アリ。子供に伝えるべき本当に大事なものは何なのか、それを学ぶことができる作品。
ちなみに恥ずかしながらでんぶが何でできているかは知らなかった。
以下、セリフメモ。
「徹子だけどトットちゃんだよ!お父さんが"トットスケ"って呼ぶからトットちゃん!」
「私、駅で切符もらう人になる!スパイにもなる!」
「用がないのに机を開け閉めしてはいけません!」
「思ってること、全部お話ししてごらん」
「どうして私、どこに行っても"変な子"って言われるんだろう?」
「みんな!でんぶは山と海、どちらのものかな?」
「僕、小児麻痺なんだ」
「しょうにまひ?」
(プールに入るのを拒んだ泰明くんに対して)「恥ずかしくなんかないわよ!みんな一緒でしょ?」
「木に登るって、こういう気持ちなんだね」
「一生のお願い!ひよこ買って!もう何か買ってなんて言わないから」
(日独伊三国同盟で盛り上がるオケメンバーに対し)「気にしないでください。私はもうドイツ人ではない。音楽を伝える役割を果たすだけです」
(腕相撲で勝った泰明くんが)「ズルしないでよ」
(泰明くんのお母さんが泣きながら)「こんなに…服を汚して…。お洗濯が大変ね…」
「"しっぽがある"なんてどうして言ったんだ!あの子が劣等感を持たなくて済むよう、私がどれだけ配慮してきたかわからないのか?」
「トモーエ学園、いい学校!入ってみても、いい学校!」
「今日からパパとママのことをお父様、お母様と呼びなさい。お前がスパイと疑われないようにするためだ」
「華美な服装をしないようにとは言われているが、法令で禁止されてはいないはずだ!」
「僕のバイオリンで軍歌は弾きたくない。ごめんね、トットスケ」
「♪噛めよ噛めよ、食べ物を」
「コラ!そんな卑しい歌を歌ってはいけない。君らも銃後を守る、立派な小市民だろ?」
「泰明くんが死んだ」
「アンクル・トム、もう返せなくなっちゃったね」
「いつかうんと大きくなったら、またどこかで会えるんでしょ?その時は(足が)治ってるといいね」
「楽しかったよ。君のこと、忘れない」
「私も忘れない」
「私、大きくなったらこの学校の先生になってあげる!」
「戦火を逃れるために、私たちも青森へ疎開することになりました。世田谷にあった赤い家の建物(自宅)も壊されてしまいました」
「先生の子供への愛情は、建物を包む炎より大きかったです」