はぐれけんきゅういん

妖怪の孫のはぐれけんきゅういんのレビュー・感想・評価

妖怪の孫(2023年製作の映画)
5.0
帰りながら改めて思ったのは、この作品こそ映画館で観なくてはならなかったということ。心から目を背けたかった。逃げたかった。逃げられない環境で直視できてよかった。これをガラガラでもMOVIXで上映しているのは松竹の矜持でしょうか。映画って平和だからこそ楽しめるものなんだよね。歴史ある松竹だからこそ誰よりもわかってることだよね。

安倍晋三のやってきたこと、生育環境、心酔する岸信介の功罪から浮かび上がる安倍本人の人物像。愛と承認欲求に強烈に飢えており、努力嫌いだが要領が良く、本人には強い信念がない、というのは実に偶像向きの資質だと思う。なぜなら私の天才的な「推し」がそういう方だから。これに血筋と手段の選ばなさが合わさった結果、国会議事堂だけでなく国民にまで妖怪が取り憑いてしまった。それを丁寧に思い出させてもらえた。

正しいことを正しいと言えない国に変えてしまったのは妖怪の孫とその取り巻き連中だろうけど、その妖怪の孫が凶弾に倒れるまでに我々有権者はどう行動していたか。どう考えてきたか。荒れるから政治の話はスルーとか、頑張った人を悪く言うなとか、選挙に行くこと自体が意義とか言って白票出しちゃうとか、そういうのずっと嫌だったしやっぱりおかしかったんだ。全部あの人たちの思う壺だったんだ。
映画終盤ではこの先の将来に絶望してる暇があったら行動しなきゃと奮い立たせてもらった。選民意識丸出しの保守派層に日本を取り戻させるんじゃなくて、我々庶民が生活を取りさなくてはならない。