プレコップさんの映画レビュー・感想・評価

プレコップ

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ビートルズ/レット・イット・ビー(1970年製作の映画)

4.0

「終わる」ロックバンドの鎮魂歌

この映画の撮影のため朝からトゥイッケナムのスタジオ入りが求められるようにことで、それまでのルーティーンを壊したビートルズは完全に分裂するまでに至るが、そこは構築し直し
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セロ彈きのゴーシュ(1982年製作の映画)

3.9

楽団の演奏のハーモニーは宇宙空間へ飛ぶ。「インドの虎狩り」で生意気なネコは歪んだ幻覚を見る。

高畑勲の鉄板演出である、音響と異空間の融合はもうこのころには完成していると知った。そして、その世界観は宮
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アメリカの友人(1977年製作の映画)

4.1

見る角度で変わる二つの顔

ハンブルク、パリ、そしてニコラス・レイが全てを持っていくニューヨークで繰り広げられるアメリカン・ニューシネマスタイルのサスペンス。と言いつつ、2回の契約殺人は「007」を想
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クリアチューラ(2023年製作の映画)

3.4

男性には入る余地のない、「女性と身体の関係性」を主題にしているため、かなり難解だった。

ミラは祖母の家に引っ越したところで、発疹が出たことから彼女の幼少期〜思春期の性体験を追想する。発疹のような症状
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こいつで、今夜もイート・イット アル・ヤンコビック物語(2022年製作の映画)

4.5

街裏ぴんくの漫談を映像化したかのようなぶっ飛び映画。

アコーディオンが迫害されている地元から飛び出したアコーディオンキングの半生を描く音楽伝記映画。明らかに「ボヘミアン・ラプソディ」をコケにしている
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ブラック・ミラー: バンダースナッチ(2018年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

配信開始から5年くらい経っていて、今更ながら鑑賞したが、これまで前情報なしでくぐり抜けられて良かったと思える一作。

ゲームの「デトロイト」と比較する声も多いが、個人的には唐突で理不尽なゲームオーバー
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ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ(1942年製作の映画)

3.7

ジェームズ・ギャグニーの珍芸博覧会

ザッと言えば、偉大なる舞台人ジョージ・M・コーハンのクソガキ時代→老人芝居で騙す若者時代→星条旗振り撒くリアル老人時代の構成。バリバリの愛国的ミュージカルを数々手
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青春(2023年製作の映画)

3.4

#アオハルかよ

というキャッチコピーのCMよりも「アオハル」を感じるドキュメンタリー。中国の子供服工場の数年間を、数人のカメラマンが追う。

セックス以外に娯楽のない田舎の学生のような日々を3時間半
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ボス・オブ・イット・オール(2006年製作の映画)

3.9

みんなのクマちゃん=ラース・フォン・トリアー

観客にすり寄るラース・フォン・トリアー。「キングダム」シリーズのラストで毎回話しかけて来るようなわかりにくい話じゃなくて、割と「観客の皆さん、ついてこら
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ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)

3.5

画面上で1滴も血を見せない脅威のスパイ映画。(そのかわり原油はタプタプ)

「一流スパイは世界をダマす」でお馴染みらしい「アーガイル」というスパイ小説の著者エリーは両親に会うため乗車した列車でリアルな
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走れ!走れ走れメロス(2022年製作の映画)

3.5

コロナ禍、ある高校生たちの叫び。

コロナウイルス対策の観点から不要不急なものに区分された演劇の世界へ入った島根県雲南市の高校生4人は徐々にステージの世界に魅了される。あまり知らなかった高校演劇の世界
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.6

Metacritic94点の"凡作"

12年ごとを描いた3幕構成でニューヨークと韓国に住む運命の2人のめぐり逢いを映す。フィルム撮影によるウェルメイドな映像の質感が印象に残る一作で、「17歳の瞳に映
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恋するプリテンダー(2023年製作の映画)

3.4

グレン・パウエルファン必見!美男美女による肉体の競演

オーストラリアを舞台にしたラブコメディ。シェイクスピア「から騒ぎ」を下敷きにしているので、古典的な構成ではあるが、要所要所に現代らしさを取り入れ
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レクイエム・フォー・ドリーム(2000年製作の映画)

4.0

狂気の映画作家・アロノフスキーによるドラッギーホラー

「痩せない痩せない痩せないよ
そんな目標果たせないよ
痩せない痩せない痩せないよ
そんだけ食べてりゃ痩せないよ……」
なサラへの誘惑がジワジワ近
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バングラデシュのコンサート(1971年製作の映画)

4.2

ジョージ・ハリスンが中心となった「バングラデシュ難民救済コンサート」の模様を収録したフィルム。

ソロアルバム『オール・シングス・マスト・パス』が成功した後のジョージ・ハリスンと彼のシタールの師匠にし
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サザエさん(1956年製作の映画)

4.3

"漫画そっくり!チエミのサザエさん"
という触れ込みが過言ではないくらい実写版としてしっかりしてる。特に、江利チエミと藤原釜足によるサザエ&父は、後のご長寿アニメーションのキャラクターイメージに大いに
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超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!(2007年製作の映画)

3.5

2000年代のアキバ系との親和性が強いイメージがあるアニメシリーズの劇場版2作目。

15年くらい前、アニマックスで幾度となく放送されていた作品で、ストーリー以上に強烈なナツミの記憶のメタファーとして
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アインシュタインと原爆(2024年製作の映画)

3.3

「オッペンハイマー」副読本として鑑賞

配信時期的にも明らかなように、「オッペンハイマー」参考資料としてセット鑑賞する以外にはそんなに観る動機もない作品。ドキュメンタリーとドラマがどっちつかずで見づら
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普通の人々(1980年製作の映画)

4.1

超地味〜!でも地味も極めれば個性になる

コンラッドのフラッシュバック描写以外は淡々とした会話劇。BGMなどの演出すらかなり抑えている。ロバート・レッドフォードの監督デビューは初っ端から玄人っぽすぎる
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アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.0

マッチョ指導の罪について考えさせられるマッチョ映画

ゴツゴツの肉体と化したザック・エフロンをスクリーンで観られてよかった。スポーツ映画なのにマッチに勝っても喜びを感じられない。それどころか重低音轟く
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戦場記者(2022年製作の映画)

4.0

イスラエルとパレスチナ、ウクライナ、アフガニスタンに入り、現地取材からニュースのその先を追う。

対立の中で良し悪しの二元論に終始せず、たとえばガザでの紛争ではイスラエルの戦争犯罪を認めつつもハマスの
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みな殺しの拳銃(1967年製作の映画)

3.5

銃弾の見えないドンパチ映画

クールな演出のオープニングから始まり、ラストもかっこいいが、中盤は同じ展開が続くので中弛みしている。

よみうりランドのプールや東名高速道路を使用したロケ地の活かし方は面
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Born in Gaza(英題)(2014年製作の映画)

2.9

救急車や海辺でサッカーをしていた少年たちまでも攻撃対象にするイスラエルの凄惨な人道破壊行為を明らかにするという確固たる意志を持った本作は、子どもによる証言で2014年ガザ戦争を伝えている。ガザにおける>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

5.0

今の時代がいちばんいいよ--ブリュッセルより

時間の都合で、「ゴースト・トロピック」と連続で観られなかった本作をやっと鑑賞。

タルコフスキー「ノスタルジア」で得られなかったヒーリング感や郷愁が存分
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.4

博士の異常な愛情 または私は如何にして水爆を愛するのを止めて心配するようになったか

原子爆弾の「プロジェクトX」でも第二次世界大戦を追う「映像の世紀」でもない、まさに「オッペンハイマー」というべき完
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一日の行楽(1919年製作の映画)

-

チャップリンの短編映画。

後の長編より「ガサツ」なチャップリンが見られる。人を踏んづけたり、殴ったり、凶暴なチャップリン。

折りたたみ椅子が組み立てられないシーンは、のちに「スヌーピーの感謝祭」な
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パームビーチ・ストーリー(1942年製作の映画)

4.3

「その場しのぎ」も突き抜ければ芸術

行き当たりばったりな脚本はよく考えたらかなり酷いものが多いが、それが気にならないくらい見せ方が上手い。「ソーセージ王」ってなんだったんだよ、とか結構そういう疑問が
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ブレードランナー ブラックアウト 2022(2017年製作の映画)

-

「ブレードランナー2049」公開時に発表された前日譚。

15分での世界観の構築が、長編2作に匹敵するほど印象深い。スターウォーズの「ローグワン」のようなスピンオフだからこそ醸し出される儚さがある。
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バイオグラフィー:TLC フォーエバー(2023年製作の映画)

4.0

病気、出産、メンバー間の不和とレフトアイの死を乗り越えたTLCは今が第二の全盛期だ!

TLC全盛をリアルタイムで体感していない自分にとって、2017年のセルフタイトルアルバムでの復活が彼女たちの音楽
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厳重に監視された列車(1966年製作の映画)

4.4

リストカッターミロシュ

「伊集院光 深夜の馬鹿力」のネタコーナー、「リストカッターケンイチ」みたいな豆腐メンタル少年が主人公。初体験で早漏が露呈したことで一本逝ってしまう。そんな彼が「男」を取り戻す
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カード・カウンター(2021年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

ポール・シュレイダー版「グラン・トリノ」

カードカウンティング=過去のカードを記憶し、これからのカードの推測を行うこと、という冒頭の説明パートから、ミニマムな演出が光る。しかし、そこで「とらんぷ譚」
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真実の囁き(1996年製作の映画)

3.8

ぜい肉つきまくりの西部劇

前半は割と面白く観られたが、後半は登場人物が多すぎ、テーマをトッピングしまくった結果、興味の持続が叶わなくなった映画。割と短所がはっきりしてる分、そこに目を瞑ればそこまで悪
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

3.8

「理由なき反抗期」映画。

主人公の中学生・聡実の反抗期は無気力や無関心のような形で訪れる。そんな折に出会うヤクザの男との奇妙な交流が、青春の虚無感からの味変を起こす。

中学生ならではのちょっとした
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Freaknik: The Wildest Party Never Told(原題)(2024年製作の映画)

3.3

1983年、アトランタの学生を中心に発生したコミュニティはブラックカルチャーのメッカになり、1990年代以降は犯罪の温床になった。

Chicのヒット曲と「ピクニック」を合わせた造語「フリークニック」
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グランツーリスモ(2023年製作の映画)

4.9

グランツーリスモは、子どもの頃によくやってた記憶がある。ニューヨークとかグランドキャニオンのコースがあったから「4」じゃないかと思うけど、また引っ張り出してやろうかな。

2023年は「スーパーマリオ
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タイムズ・スクエア(1980年製作の映画)

3.8

1980年公開なので、使われている曲はほとんど70年代のものだが、アーティストが80年代にも活躍するメンツなので、実質「1980年代っぽいロック×アメリカンニューシネマ」という異色のマッチになった一作>>続きを読む

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