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パスト ライブス/再会のプレコップのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
3.6
Metacritic94点の"凡作"

12年ごとを描いた3幕構成でニューヨークと韓国に住む運命の2人のめぐり逢いを映す。フィルム撮影によるウェルメイドな映像の質感が印象に残る一作で、「17歳の瞳に映る世界」を思い出すようなぬくもりあるニューヨークの景色を味わえる。右が未来で左が過去を象徴するようなカメラワークも光るものがあった。

ノラとヘソンの2人の間には「運命」という他の人にはわかり得ない関係性があるが、その外にいる人間としてのアーサーが観客に近い目線であることからそちらにばかり感情移入してしまう。バーの場面以降はそれが顕著になっており、意図的にアーサーを外したカメラワークが彼の不安感を観客に体感させる演出は良かったりする。

アカデミー脚本賞ノミネートは少し疑問が残る。ノラとヘソンは観客から遠い存在になってしまい、中でもヘソンに関しては作者自身の投影であるノラから見てもぼんやりした「韓国的男性」のレッテルを貼られるばかりで、全ての描写が中途半端に見えてしまう。そのあたりは同じA24製作の「スーヴェニア」と共通しており、内省的でありすぎるがために観客の入る余地を作れていない。

また、「常に未来を見ている」象徴たるノラも結局はそういう家系にあったことやアメリカという地盤に移ったことによってそういう人間性が培われたわけで、少年漫画や「スターウォーズ」のように結局は血筋がものを言う物語にしか見えなかったのもテンションが下がった。

グリズリーベアによる劇伴はかなり好みで、適材適所の選曲も活きているサウンドトラックもドンピシャだった。ラストのシャロン・ヴァン・エッテンの「Quiet Eyes」は劇場で見ていて最も心が震えた瞬間だった。
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