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Born in Gaza(英題)のプレコップのレビュー・感想・評価

Born in Gaza(英題)(2014年製作の映画)
2.9
救急車や海辺でサッカーをしていた少年たちまでも攻撃対象にするイスラエルの凄惨な人道破壊行為を明らかにするという確固たる意志を持った本作は、子どもによる証言で2014年ガザ戦争を伝えている。ガザにおける虐殺は今この時も続いており、局面が秒刻みで変わっている中で、ガザの子どもたちの声はより切迫感を帯びて聞こえる。

しかし、ドキュメンタリー映画としては「否」な内容になってしまっている。異常に多いスローモーションは過剰な演出の典型的にダメな技法で全く効果がないどころか悪印象。ガザ戦争で犠牲となった子どもたちの名前と年齢を一挙に見せるシーンも仰々しい演出で寒く、その悲惨さがいまいち伝わってこない。挙げ句の果てには大きいボリュームのBGMが子どもたちの声(ただしインタビュー部分ではなく普段の会話)をかき消してしまい、リアルな生活面が伝わりにくいところもあった。そもそもこうした戦場ドキュメンタリーで感動を誘引させるのがおかしいのに、今作はそれを念頭に置くかのような演出が散見される。

ガザが攻撃を受けている時の映像も含め、戦争がそこに住む人々に与えた甚大な被害を知ることができるのはひとえに取材力によるもので、なによりガザ地区の子どもたちの目を見ると自分自身にもできることがないか、考える機会にもなった。だからこそ、そうした丁寧な取材とガザの子どもたちの声を蹂躙する、ドキュメンタリー演出のダメさがより際立ってしまっている。
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