富樫鉄火さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

富樫鉄火

富樫鉄火

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私は今も、密かに煙草を吸っている(2016年製作の映画)

4.0

#41 イスラーム映画祭9
ムスリム女性の“溜まり場”映画といえば、いままでにも美容院など、いくつかあったが、まさか女性専用公衆浴場がでてくるとは驚いた。
その、初めて見るヴィジュアルの強烈さと、特に
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スターリンへの贈り物(2008年製作の映画)

4.5

#40 イスラーム映画祭9
泣かされた。
機関車の駅で、少年と老父の別れ……『砂の器』以来の名場面だった。
カザフ人の命運を、ムスリム、ユダヤ少年、クリスチャン女性などを配して、通俗メロドラマで描きな
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炎のアンダルシア(1997年製作の映画)

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#39 イスラーム映画祭9
これを観て、エジプトのひとたちは、すんなり理解できたのだろうか。
一応、事前にパンフで理解したつもりだったが、いざ観ると、かなり複雑な歴史知識が必要で、さらにあまりに多い登
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私が女になった日(2000年製作の映画)

4.0

#38 イスラーム映画祭9
これは面白い映画だった。
イスラム社会における女性への抑圧を、寓話的に描いた3話オムニバスのファンタジー。
最後に3つの設定が見事に重なって、「映画」でなければできない感動
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戦禍の下で(2007年製作の映画)

4.0

#37 イスラーム映画祭9
今回が初鑑賞だが、心底、観てよかったと思った。
すごい映画だった。
第二次レバノン戦争の真っただ中で撮影を開始し、戦禍のドキュメント・フッテージを集めたあと、停戦後(それで
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辛口ソースのハンス一丁(2013年製作の映画)

3.5

#36 イスラーム映画祭9
これは、たいへん楽しく観た。
『おじいちゃんの里帰り』など、ドイツのトルコ移民を描いた映画は、よい作品が多い。
編集が、いかにもコメディ特有のダイジェスト風で、途中から少々
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ハンズ・アップ!(2010年製作の映画)

3.5

#35 イスラーム映画祭9
『ぼくらの七日間戦争』と、そっくりのシチュエーションで、ちょっと驚いた。
もしや、かなり参考にしたのではないか。
もちろん、たてこもりの理由は、『七日間戦争』とはちがって、
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ハーミド〜カシミールの少年(2018年製作の映画)

-

#34 イスラーム映画祭9
カシミール地方を舞台にした、少年の成長物語。
基本形は『君たちはどう生きるか』とおなじで、親の失踪(死)をいかに受け入れ、乗り越えていくかが主軸だが、そこにアッラーや、イン
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

#33
エルビスの幼な妻物語だが、こんな実情だったとは驚いた。
いかにもソフィア印の映画だったが、もう少し、彼女の苦悩を掘り下げてほしかった。
まだご本人が存命中のはずで、それゆえ、描きにくい面もあっ
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ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

4.5

#32
面白かった!
さすが、金子修介は、少年少女の扱いがうまい。
しかも、演出やテンポが絶妙。
2時間全編、一瞬たりと先が読めず、どんでん返しの連続だった。
おそらく原作がよくできているのだと思うが
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遊民街の銃弾(1962年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

#31 東映大泉大会
『警視庁物語』の傑作『深夜便一三〇列車』の監督が、なぜ、こんな弛緩した映画を?
やはり、これも60分弱にするべきだったのでは。
実は河辺公一さんの音楽を期待して観に行ったのだが、
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ブルックリンでオペラを(2023年製作の映画)

3.0

#30
たいへん面白い話なのだが、もう少し演出にメリハリがほしかった。
クライマックスなど、本来、もっとワクワクできたはず。
オペラはなかなか魅力的だった。
アン・ハサウェイはどちらかというと脇役で、
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Ryuichi Sakamoto | Opus(2023年製作の映画)

3.5

#29
徹底して坂本ファンのための映像。
ゆったりした曲が延々と続くので、興味のないひとには、つらいと思うが、ファンには、たまらない100分余だと思う。
しかし、いまさらながら、アカデミー作曲賞は、戦
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

#28
予告編だと、なにやら、視覚障害児しか“目撃者”がいないゆえのミステリ法廷劇のようだったが、まったくそうではなく、騙された。
これは、中年バイセクシュアル母の“おんな物語”であって、その道具だて
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恋の浮島(1982年製作の映画)

2.5

#27 女性映画人大会
むかし、岩波ホールで封切りしていた作品だと思う。
語り口が独特で、それが身につくまで、60分かかる。
それがわかれば、後半は知的展開で楽しめるのだが、いかんせん、全編3時間弱は
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マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

3.0

#26
これは、脚本の失敗だと思う。
本作のラストを、60分くらいにして、そのあと、もう一つドラマをつくって、みんなの、最初の大活躍をみせてほしかった。
キャスティングは、最高。

曽根崎心中(1981年製作の映画)

3.0

#25 女性映画人大会
やはり文楽は、狭い小屋のセットで、全景を観るものだと痛感した。
アップで人形の顔を見ても、しらけるばかりだった。
主遣いも黒衣だったが、かえって出遣いにしても面白かったのでは。
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英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2023/24 ロイヤル・バレエ 「くるみ割り人形」(2023年製作の映画)

4.0

#24
(ブログからの抜粋転載です)
本作は、たいへん不思議なバレエである。チャイコフスキー3大バレエのほか2作《白鳥の湖》《眠りの森の美女》のような、激情ドラマではない。ストーリーも、あるようなない
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METライブビューイング2023-24 ダニエル・カターン「アマゾンのフロレンシア」(2023年製作の映画)

3.0

#23
ガルシア=マルケスにインスパイアされたというが、これはカルペンティエルの『失われた足跡』ではないのか。
それだけに、わかるようなわからんような話で、いわゆる物語文法が、西洋オペラとは、かなりち
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フェルメール The Greatest Exhibition-アート・オン・スクリーン特別編-(2023年製作の映画)

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#22
予告編では、高精度カメラで、すごい映像を見せるような話だった。
そこで、てっきり、科学ドキュメント的な映画かと思って、鼻息荒く行ってみれば、そんな部分はチラリで、要するに展覧会の宣伝映画。
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娘三羽烏(1957年製作の映画)

3.5

#21
これは、どう観ても、千葉泰樹・井手俊郎=東宝映画の世界。
松竹なりに、特別ゲストや名作オマージュで特色を出そうとがんばっているが、やはり、かなわない。
特に人物の出し入れは、井手シナリオのうま
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.0

#20
『アルジャーノンに花束を』の変形版のようで、また、世界観や画面構成に既視感があり(かつてのケン・ラッセルかウエス・アンダーソン?)、あまり新鮮味がなかった。
たぶん、原作小説のあまりのユニーク
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コット、はじまりの夏(2022年製作の映画)

5.0

#19
これは素晴らしい映画だった。
もっと早く観ればよかった。
まだ1月だが、今年、これ以上の映画に出会えるかどうか。

いままで観たアイルランド映画が英語だったことに疑問を感じなかったが、アイルラ
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ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

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#18
もっと「映画」にアレンジされているかと思ったら、原作漫画の「再現」だった。

METライブビューイング2023-24 アンソニー・デイヴィス「マルコムX」(2023年製作の映画)

3.5

#17
全編、変拍子と不協(的な)和音、かなりの大音量で、息を抜ける箇所がなく、いささか疲れた。
場や景の転換のたびに薄幕を下ろすので、落ち着きがなかった。
しかしまあ、前作の死刑オペラにつづき、こう
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英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2023/24 ロイヤル・バレエ 「ドン・キホーテ」(2023年製作の映画)

4.0

#16
(以下はブログからの一部抜粋です)
今回はキトリがマヤラ・マグリ、バジルがマシュー・ボール。すでにおなじみの顔ぶれである。2人とも軽々と、それでいて力強い踊りを見せてくれる。マグリの32回転フ
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異人たち(2023年製作の映画)

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#15
ポスター・ヴィジュアルの雰囲気から「もしや」と思っていたのだが、やはり、かなり本格的なゲイ物語だった。
あたしは、ゲイをモチーフにした映画は否定しないし、いまの時代、大きな題材であることもわか
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巡る、カカオ~神のフルーツに魅せられた日本人~(2023年製作の映画)

4.5

#14
たいへん勉強になった。
Mpraesoや、カカオハンターズの宣伝のような感じもあったが、しかしとにかく、カカオとは、生産者と消費者の間に、たいへんな「乖離」があることを初めて知った。
(生産者
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サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

4.0

#13
長年、アレンの映画を観続けているが、病膏肓も、ここまで来たかといいたくなるヲタクぶりと、相変わらずのグタグタ神経質。
それを楽しめるひとなら、こんなに面白い映画はない。
あの次々と登場する夢(
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枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

#12
このひとの映画は、よく「労働者」「社会の底辺」「不遇」といったキイワードで論評されるけれど、あまりそういう社会学的な見方をせず、ふつうの人生ドラマだと思って観る方がよいのではないかと、前々から
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ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

3.5

#11
いままでの脱北ものとちがうのは、中国へ渡って成功ではなく、ベトナム〜ラオスを経て、タイまで行かないと脱北成功にならない点。
しかも大半が山中徒歩で、もう少し他のルートがないものか、また、本当に
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淑女は何を忘れたか(1937年製作の映画)

4.0

#10 小津フィルム大会
かなり傷んだプリントで、雑音がひどく、時折セリフさえ、よく聞き取れない。
以前観たときは、これほどではなかったような気がするのだが。
前はフィルセンで観たのだろうか。

ミッ
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レザボア・ドッグス デジタルリマスター版(1992年製作の映画)

3.5

#9
デジタルリマスターで観たら、血が偽物であることが強烈にバレるのではないかと心配したが、それほどでもなかった。
本筋以外の余計な部分や、時間軸構成などがユニークだった記憶があったが、いま観ても、そ
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早春(1956年製作の映画)

4.0

#8 小津フィルム大会
小津のなかでは、珍しく1回しか観たことなかったので、この機会にと、数十年ぶりに再鑑賞してみた。

以前は、浮気騒動から立ち直る夫婦の話だと思っていたが、こっちも老人になり、見方
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

5.0

#7
これは素晴らしい映画だった。
昨年のTIFFで即完売になったのも当然だと思った(今回も、小スクリーンだったが、平日夕刻で、ほぼ満席だった)。

最初は、日本財団&TTTとユニクロの宣伝映画だと思
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ゴーストワールド(2001年製作の映画)

4.0

#6
初鑑賞。
原作のグラフィックノベルがよくできており、あまりいじらず、原作者本人に脚本を書かせたことが吉と出た名作だと思う。
社会と折り合いをつけて生きようとする子と、それができずに焦る子との対比
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