mat9215さんの映画レビュー・感想・評価

mat9215

mat9215

映画(1147)
ドラマ(0)
アニメ(0)

シャーキーズ・マシーン(1982年製作の映画)

4.0

双眼鏡や望遠鏡で女の住まいを監視=窃視していると、当然ながら事件を目撃する。ただ『裏窓』と違って、主人公は被窃視者に恋心を抱き、ついには仲良くなってしまう。このご都合主義的な展開は、もちろん、冴えない>>続きを読む

偽れる装い(1945年製作の映画)

4.0

男女の情熱の昂まりがシンプルな会話の切り返しだけで描けるなんてまさにマジック。そこに極端なクロースアップが追い打ちをかける。1940年前後にアメリカで製作された婚約不履行ものは喜劇が多かった。このフラ>>続きを読む

CURE キュア(1997年製作の映画)

5.0

全編で不穏な雰囲気と緊張感が持続する傑作。精神科の診察室、取調室、病院といった広大な寒々とした空間や、床にじわじわと広がっていく水、あるいは、役所広司の自宅でなり続ける洗濯機の音といった何でもないもの>>続きを読む

世界中がアイ・ラヴ・ユー(1996年製作の映画)

3.0

ニューヨークの金回りのいい一家の人々が色恋沙汰のドタバタを繰り広げる、いつもの通りのアレン映画。踊りと歌のミュージカルシーンはそこそこ楽しいながらも今ひとつキレがない。こんなところも、何事も小さくまと>>続きを読む

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)

3.0

重機が行き交う砕石場の間近にある住居。耳に刺さるような赤ん坊の鳴き声。そこを出た女が頭にはカーラー、着るものはパジャマといった格好でボタ山に登り、石炭屑を拾う老人に小金を無心する。なんて素敵なオープニ>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.0

冬の針葉樹を真下からトラッキングで捉える冒頭は、本作が音楽家との共同制作から始まったことを実感させる。丸太を薪に裁断していく場面では、チェーンソーが当てられた丸太が台から落ちるタイミングや、輪切りにさ>>続きを読む

ブロードウェイと銃弾(1994年製作の映画)

4.0

これはアレン作の中では好み。Show must go onのバックステージもの。意識高い系の劇作家が現実に揉まれた末に、本当の才能とその暴走ぶりを目の当たりにして劇作から身を退く。ギャングが凄みを見せ>>続きを読む

パリでかくれんぼ(1995年製作の映画)

5.0

これは楽しいリヴェット作。訳ありげな三人の姐さんたちが、一人の男を介してゆるやかに交錯する。出鱈目な展開のようでいて、じつはかっちりと構成されている。
かっちり構成されているのはストーリーというよりも
>>続きを読む

ウディ・アレンの重罪と軽罪(1989年製作の映画)

4.0

眼科医マーティン・ランドーのエピソードと、ドキュメンタリー映画監督ウディ・アレンのエピソードが別々に描かれ、同席したパーティ会場で束の間交錯して、また離れていく。この間合いがなかなかよろしい。ユダヤ人>>続きを読む

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命(2023年製作の映画)

4.0

オープニングの緊迫感がずっと続く濃厚なドラマ展開。一方で、磔刑のキリスト像が動きだしたり、教皇が割礼されたりする幻想描写は強度あり。息子、父、母、異端審問官、教皇ピオ9世といった登場人物たちの顔は雄弁>>続きを読む

殺しを呼ぶ卵(1968年製作の映画)

3.0

ジャン=ルイ・トランティニャンの変態ぶりや、登場人物たちが殺人に至るまでの愛憎劇や、首なしニワトリの創造をめぐる科学技術盲信批判などよりも、ニワトリへの執着ぶりに感銘を受ける。ニワトリの赤いトサカと白>>続きを読む

セプテンバー(1987年製作の映画)

3.0

ベルイマンラブをむき出しにしていた『インテリア』と同様に母娘の葛藤を中心に物語が展開する。本作ではさらに複数の色恋が配置され、仕立ては芝居のごとし。メンヘラのミア・ファーロウやクズ男のサム・ウォーター>>続きを読む

ピクニック(1936年製作の映画)

5.0

映画史に燦然と輝くブランコ場面!老いも若きも子供も坊さんたちも若い娘に目が釘付けになる。ピクニックに訪れた商人の一家は祖母、父、母、娘、それに使用人と思しき冴えない小僧が帯同している。郊外に到着したと>>続きを読む

イノセント(1975年製作の映画)

3.0

マカロニもかくやという極端なクロースアップ。そこに籠る強い視線の交錯によってメロドラマが展開される。とくにジャンカルロ・ジャンニーニの眼差しが強烈だ。主要な登場人物の裸体を曝さずにはいられない巨匠。マ>>続きを読む

ラジオ・デイズ(1987年製作の映画)

3.0

ウディ・アレンの作風はいつもセコくて小狡いけど、ちょっぴりと映画を感じるときがある。とくに撮影。この時期はカルロ・ディ・パルマが多くのアレン作品を手掛けていて、トラッキングショットなんて上手さが際立つ>>続きを読む

放蕩娘(1981年製作の映画)

4.0

成人して久しい娘が父親に激しくぶつかっていく。メンヘラ女を活き活きと演じるジェーン・バーキンと、曖昧な表情を浮かべたまま受け身に徹するミシェル・ピコリ。会話の切り返しが多い中で、バーキンがピコリに頭突>>続きを読む

トゥルー・ロマンス(1993年製作の映画)

5.0

トニースコがタランティーノの世界を大事にしていることが伝わってくる。デニス・ホッパーとクリストファー・ウォーケンのくだらない会話と、へらへら笑っているウォーケンがいつ爆発するかというサスペンスはまさに>>続きを読む

リベンジ(1990年製作の映画)

3.0

前半、ケヴィン・コスナーとマデリーン・ストウの不義密通カップルに老夫のアンソニー・クインがいつ「リベンジ」を企てるかというサスペンスに手に汗を握る。といいたいところだが、カップルのいちゃつきが長くて少>>続きを読む

スパイ・ゲーム(2001年製作の映画)

4.0

ツイードのジャケットにブルーのシャツ。ロバート・レッドフォードの出立ちは、本作と同じくCIA職員を演じた『コンドル』(1975年)そのまま。老境に入ってなお知略を繰り出すレッドフォードと、愛する者のた>>続きを読む

エネミー・オブ・アメリカ(1998年製作の映画)

4.0

暗いスクリーンで観なければ味わえない闇が充実した絵に、目まぐるしい動きと細かいカットつなぎ。トニスコの刻印がいっぱい。主人公のウィル・スミスはドジも踏むけど、いざというときは機転を利かせて、自分に災厄>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.0

A24が手がけるファミリーものは、やはりA24に相応しく人間関係の歪みに焦点が当てられる。父親の言いつけに、男兄弟たちが一様に「イエッサー」と応える。ハイソ家庭ならいざ知らず、米国中西部の一般家庭を描>>続きを読む

ガンズ・アンド・キラーズ(2023年製作の映画)

3.0

アート映画とか心温まる小品系でこの規模の映画は日本でも公開されるけど、本作のようなアクションものはどれくらい作られているのだろうか。ケイジはこの小規模アクションもので数多くの作品に出まくっていて、ケイ>>続きを読む

遠い太鼓(1951年製作の映画)

3.0

ゲイリー・クーパー大尉が率いる歩兵部隊は、ジョン・フォードの騎兵隊とは趣が違う。砦を華々しく爆破した後は、地面や水面を移動する逃避行に終始する。泥臭くも男臭い。最初にクーパーが登場する場面は何回かのジ>>続きを読む

ザ・ファン(1996年製作の映画)

4.0

デニーロの胡散臭い笑顔が炸裂するサスペンス・ホラー。野球好きのおっさんカジュアル、セールスマンのスーツ、贔屓選手のユニフォーム、審判員のユニフォームといったデニーロのコスプレがストーリーを動かす。

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

2.0

とにかく気持ち悪いものを見せようという中2病的な趣向。自分が中2の頃だったら面白がっていただろう。R18指定という禁を破って見るささやかな背徳感とともに。こうした趣向と映画の面白さとは別物だということ>>続きを読む

ラスト・ボーイスカウト(1991年製作の映画)

4.0

アクション場面のほとんどは不意打ちの一撃でキレ良く片付く。たとえば、ブルース・ウィリスが悪役の邸宅に拉致された後、タバコの火をめぐる小競り合いの末に拳の一撃で相手の息の根を止める展開のキレのよさ。Li>>続きを読む

ビバリーヒルズ・コップ2(1987年製作の映画)

4.0

乾いた気候のカリフォルニアでも、夜の場面の路面は濡れて灯火を反射している。大半の場面は闇とわずかな光のなかで展開される。『ハンガー』では浮ついた感のあった暗い絵へのこだわりが、犯罪活劇ではキレのよいア>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

3.0

絶え間のない緊張感ばかりが続く3時間。いつものように時間軸を生真面目に操作するノーランは、初めてだという性交描写も生真面目だった。人類の叡智が結晶された爆発を幻視するときの閃光、火炎、暴風、人体損壊な>>続きを読む

クリムゾン・タイド(1995年製作の映画)

4.0

潜水艦映画にハズレなしと言われる。本作の台詞で『眼下の敵』と『深く静かに潜航せよ』に言及があるのはご愛嬌。潜水艦内は暗いだけでなくアクセントとなる光が当たっていて濃密。ジーン・ハックマンとデンゼル・ワ>>続きを読む

ハンガー(1983年製作の映画)

3.0

カトリーヌ・ドヌーヴとデヴィッド・ボウイの浮世離れしたたたずまい。そこに、ぐっと下世話感のあるスーザン・サランドンを配置する妙。愛し合う吸血鬼カップルという物語では、ジム・ジャームッシュが『オンリー・>>続きを読む

マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)

3.0

普通の映画なら数本分くらいの材料が詰め込まれている。結婚生活の開始がさまざまな事件で引き延ばされた末に、やっと成就するに至って強引に終了する。意志をもった女や戦後ドイツ史に関わる寓意が込められた数々の>>続きを読む

国境事件(1949年製作の映画)

4.0

ジョン・アルトンが撮影監督を務めるアンソニー・マンのノワール作品にハズレなし。黒い闇が限りなく深い。メキシコ人の出稼ぎ農民の話としては、30数年後のフライシャー『マジェスティック』もあった。

都会の叫び(1948年製作の映画)

4.0

シオドマクは本当にノワールが上手い。リチャード・コンテの人たらしぶり、病室からの脱出、悪徳弁護士事務所での立ち回り、夜の街を走る自動車内の治療、大女ホープ・エマーソンの不気味なたたずまい。それに、イタ>>続きを読む

愛と激しさをもって(2022年製作の映画)

3.0

誰もいない海岸で中高年の男女が睦み合うオープニング。この後に見舞われる不幸を十分に予感させるほどの幸福感が溢れている。不幸の兆しは、ジュリエット・ビノシュが元カレの姿を見掛けただけで心が乱れるところで>>続きを読む

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)

3.0

ある一日の三人の女のストーリーが、直接接触することなく紡がれていく。三つのストーリーに共通するのは記憶というテーマだ。ハローワークに通う失業者は知人の記憶に召喚され、ニュータウンを彷徨う。ガス検針員は>>続きを読む

二重結婚者(1953年製作の映画)

4.0

アイダ・ルピノが階段を登って居室に入るまでを捉えるショットがいいなと思ったら、何度か繰り返された。ビジネスに才長けたジョーン・フォンテインと中華料理屋ウェイトレスのアイダ・ルピノは異なった階層にある。>>続きを読む

>|