mat9215さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

mat9215

mat9215

映画(1161)
ドラマ(0)
アニメ(0)

東から(1993年製作の映画)

5.0

冒頭で荒涼とした田園風景を見せたあとは、都市の風景が続く。これは、言葉の通じない都市を歩き回っているときの見る/見られる関係そのものだ。ツーリストが見る視点と、ツーリストを見返す視線。シワい表情の無数>>続きを読む

フレンジー(1972年製作の映画)

4.0

晩年を迎えてヒッチコックの猟奇趣味が炸裂する。河川浄化を訴える演説の最中に全裸の女性死体がテムズ川に流れ着くのは序の口。女性をネクタイで絞殺する場面や、殺人犯が走行中のトラックの荷台でジャガイモまみれ>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.0

前半のイカれた世界観には心惹かれるものの、森の演劇集団のくだりで失速し、実家以降の場面は蛇足感があった。母親による子供の支配と作者の妄想ダダ漏れな描写は、我が国の巨匠、楳図かずおの『洗礼』に通じるもの>>続きを読む

カラヴァッジオ(1986年製作の映画)

2.0

カラヴァッジオの光を模した活人画はそれなりだけど、活人画を題材にした映画といえばゴダールの『パッション』。

スペアキー(2022年製作の映画)

3.0

ヴァカンスシーズンのナンシー郊外、バンリュー(郊外の低所得者団地)に住まう中学生娘と、歯医者の倅の大学生とが束の間関わり合う。娘の同居者は、娘に電気代を求める母親や、義父、姉妹、それにその子供たち。こ>>続きを読む

ジャンキーばあさんのあぶないケーキ屋(2012年製作の映画)

3.0

黒人との混血の孫に向かって「お前は黒いから嫌いだ」と毒づくセリフがあっても、物語の後半でほのぼのと回収されるウェルメイドの人情もの。気の強い婆さん主人公はベルデナット・ラフォン。トリュフォーの短編『あ>>続きを読む

ある女の愛(1953年製作の映画)

4.0

子供の頃から、古典フランス映画の「FIN」が出るタイミングが好きだった。妻になるよりも離島の医者の仕事を選んだ主人公。そこに新任の教師が挨拶に来て、新婚の夫と二人で赴任したと告げる。完璧なタイミング。

Here(2023年製作の映画)

3.0

日が暮れかかる森の中、しゃがんでいた男女が立ち上がると、二人の頭がフレームアウトし、二人の身体の距離は近い。沈黙の後、女が「聞いて」というと、雨の気配が感じられ本降りになる。雨は街中の場面でも激しく降>>続きを読む

セブン(1995年製作の映画)

4.0

今まで見たフィンチャー作品の中では好み。物語を停滞させずに進行させている。暗く緻密に作り込まれた絵はCFやMVの延長にあるものの、暗闇の中で観ることを求める映画の絵ではある。

まわり道(1974年製作の映画)

3.0

並走する列車の窓越しの切り返し、テレヴィジョンに映る『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』、それにナスターシャ・キンスキー。40年ぶりに観て覚えていたのはそんなところ。『ラ・パロマ』の怪優ペーター・カ>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.0

主人公は老境にあって過去を悔恨する元映画監督。昔の恋人との会話や、亡くした息子の思い出や、つましい海辺の暮らしぶりが禁欲的に、かつ丹念に描かれる。こうした本筋に直接関わらない場面を、映画の上映時間を省>>続きを読む

都会のアリス(1973年製作の映画)

4.0

大御所になる前のヴェンダースはよい。ロードムービー三部作の中でこれは初見。予期せぬ事情から共に旅に出ることになったフォグラーとロットレンダーのカップルが絶妙だ。口が達者で文句の多いロットレンダーにうん>>続きを読む

これで三度目(1952年製作の映画)

4.0

毎度楽しいオープニングは、俳優やスタッフたちが撮影所に出勤するところを捉える趣向。そこからギトリが演じる俳優の舞台場面や楽屋でのポーリーヌ・カルトンとの会話を経て、ようやくベルナール・ブリエが三度コキ>>続きを読む

天狗飛脚(1949年製作の映画)

4.0

オキュパイドジャパン時代(1952年の講和条約締結まで)。占領軍によるチャンバラ禁止という制約を逆手にとり、ただ人が走るだけで見せ場を作った時代劇。人が走る(コマ落としによる加速あり)だけで滅法盛り上>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.0

ランティモス作品を観ると、ついついブニュエルを思い出してしまう。そして、ブニュエルの偉大さに思いを馳せる。ポップな美術やコスチュームでイカれた世界が描かれる本作に込められた寓意は意外と生真面目だ。そこ>>続きを読む

ジャングルのけもの(2023年製作の映画)

1.0

ナレーションも務めるベアトリス・ダルの貫禄だけが印象に残る。1979年から1999年の20年間におけるディスコ・クラブの変遷にも、そこに頻繁に通いながら「あれ」を待ち続ける男女にも感興がまったく湧かず>>続きを読む

狐の呉れた赤ん坊(1945年製作の映画)

4.0

真向かいから来る本物の大名行列に臆せず突き進んでいく子供たちの大名行列。輿に乗っている立派な顔立ちの子供は子役時代の津川雅彦だった。

春秋一刀流(1939年製作の映画)

4.0

冒頭、戦いに進む両陣営の人々が左右交互にトラックショットで描かれる躍動感から引き込まれる。仰角で捉えられる登場人物たちは、地上界にありながら神話界に属するかのような神々しさだ。ゾルタン・コルダの『サハ>>続きを読む

のら犬(2023年製作の映画)

3.0

フランスの田舎町でろくに働かずにつるむ幼馴染の男二人。背の高い男は、ドッグと呼ぶ気弱そうな男に威圧的に接する。この二人の関係の変化と、それに伴う二人の成長が描かれる。威圧的な男の描写が丁寧だ。モンテー>>続きを読む

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

3.0

オープニングのツカミが大量殺戮の事後から始まるなど、派手な描写を長時間続けることを避け、緊張感のあるアクション場面を短時間に留める。また、暴力による身体的な苦痛の描写を欠かさない。こうしたところは好感>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

4.0

バリー・コーガンは、当て書きしたのかと思うほどのハマリ役。どんな映画の端役でも強烈な印象を残すコーガンが、圧倒的な階級差のある美男を愛しかつ憎み、その家庭を崩壊させて財を簒奪する。こんな複雑な主人公を>>続きを読む

サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

3.0

ここのところウディ・アレンは撮影をヴィットリオ・ストラーロに委ねていて、ストラーロに任せ切った絵作りは眼福。『男と女の観覧車』では夕方の光が、また『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』では雨の屋内の光が>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

3.0

結末が分かっていても、ちょいとはらはらする実話ベースのウェルメイド映画。物語を淡々と語り、盟友マット・デイモンの芝居を見せる演出に徹しつつも、東洋思想にかぶれたCEOを嬉々として演じるベン・アフレック>>続きを読む

セレブリティ(1998年製作の映画)

4.0

離婚した男女のその後の人生の浮き沈みといった軽いお話しが重厚なモノクロ画面で描かれる。撮影監督は多くのベルイマン作品を手がけたスヴェン・ニクヴィスト。ベルイマン好きのウディ・アレンは自作で何度か起用し>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.0

デ・ニーロは邪悪な胡散臭さを発揮していて、毎度お馴染みのデ・ニーロに安心したりする。一方で、ディカプリオは表情の一つ一つに愚かさを滲み出させていて、愚かさを見せる名演というところ。陰影の強い絵作りと太>>続きを読む

マジェスティック(1974年製作の映画)

4.0

漢ブロンソンはスイカ農家。弱い立場のメキシコ移民に優しく、チンピラや極道には厳しい。ダニー・トレホ級の悪相を備えたアル・レッティエリは軽くあしらわれて、復讐のためにブロンソンに粘着する。フライシャーの>>続きを読む

ギター弾きの恋(1999年製作の映画)

4.0

小物のロクデナシ・ミュージシャンという役柄でショーン・ペンが輝く。引っ掛けた女をクルマに乗せて連れていくのはいつもゴミ捨て場や鉄道の線路。ネズミを撃ち殺したり、貨物列車を見るのをつき合わせる。口が聞け>>続きを読む

スコルピオンの恋まじない(2001年製作の映画)

3.0

ウディ・アレンによる1940年代スクリューボールコメディの再現。『ヒズ・ガール・フライデー』のように男女間で辛辣な言葉が交わされる。ハワード・ホークスやプレストン・スタージェスほどにはシャープでないの>>続きを読む

雨の午後の降霊祭(1964年製作の映画)

3.0

暗い屋内と曇った屋外で展開される1960年代英国サスペンス。少女を誘拐する際にショーファードリブンのロールスロイスから、しょぼいサイドカーに乗り換えるギャップに萌える。皮の帽子とゴーグルを付けたり、白>>続きを読む

さよなら、さよならハリウッド(2002年製作の映画)

3.0

久しぶりに再会した息子に、目が見えないことと、その原因をあっさりと見破られてしまうあたりの間合いはよろしい。盲目の映画監督になるあたりでラストのオチは見えたけど、そうきたか。

マンディンゴ(1975年製作の映画)

4.0

お腹いっぱいになるくらいに重苦しく、かつ、えげつない話が端正な演出で描かれる。白人の登場人物に善人が一人もいない。これはバリー・ジェンキンスのテレビシリーズ『地下鉄道』に先行している。主人公の農場主ペ>>続きを読む

おいしい生活(2000年製作の映画)

3.0

非インテリを演じるウディ・アレン。いつもと違ってスノッブな話題はもっぱらパーティ場面の脇役たちが口にし、しかもスノッブの底の浅さが見えるほどではない。そんな会話で気まずい思いをする非インテリ夫婦の描写>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

市井の男の1日ごとの暮らしの反復と、そこに生じる小さな差異やささやかな事件。これはジム・ジャームッシュの『パターソン』と同じ設えだ。巨匠、久しぶりに良いではないか。近作『世界の涯ての鼓動』のストレート>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.0

ケリー・ライカートによる西部劇再構築。『ミークス・カットオフ』における乾いた砂漠から湿潤な森の中に舞台が変わっても、リアルな生活描写とか、先住民族の扱いとか、そのスタイルは変わらない。本作では闇の暗さ>>続きを読む

80 For Brady : エイティ・フォー・ブレイディ(2023年製作の映画)

2.5

ネトフリドラマ『グレース&フランキー』で長らく主役コンビを務めたジェーン・フォンダとリリー・トムリンに、リタ・モレノとサリー・フィールドが加わった鉄壁のばーさん軍団。フォンダが最年長かと思ったら、モレ>>続きを読む

ヒューマン・ボイス(2020年製作の映画)

3.5

ティルダ様の熱い一人芝居と、アルモドバルのグラフィックセンスを満喫できる小さな逸品。衣装からセットの隅々まで綿密に作り込まれている。高そうな衣服に身を包んだ女が工具屋で斧を購入する違和感。彼女が斧を振>>続きを読む