ティルダ様の熱い一人芝居と、アルモドバルのグラフィックセンスを満喫できる小さな逸品。衣装からセットの隅々まで綿密に作り込まれている。高そうな衣服に身を包んだ女が工具屋で斧を購入する違和感。彼女が斧を振>>続きを読む
映像、音楽、特殊メイクなどなどの作り込みは立派だし、バイセクの大指揮者とその妻の物語は波乱万丈なのだけど、いっこうに心が打たれない。ブラッドリー・クーパーによるバーンスタインの再現レベルが高すぎて、形>>続きを読む
家族内の葛藤、鬼軍曹との交流、挫折、そして復活というテンプレをがっちり押さえたウェルメイド映画。ル・マンでクライマックスを迎えるのは、マンゴールド『フォードvsフェラーリ』もそうだった。この長時間レー>>続きを読む
傑作。手際のよいストーリーテリングと、簡潔にして要を得た描写。こうしたトーキー初期映画の美点が、今日にあまり継承されていないのが残念。雨を降らすとなれば容赦ない土砂降り。人を殺すことに躊躇しない男が殺>>続きを読む
辛気臭い顔つきをした男女の不器用なすれ違いラブストーリー。30年前のカウリスマキ映画なら、マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンという、極め付けの辛気臭い顔つきコンビがカップルを演じるところだ。臙>>続きを読む
あやかしの映像に目を見張るだけでなく、中国東北部に見立てた荒涼とした大地と、そこで展開される熱い物語に引き込まれる。この頃までに作られた戦争映画には、『人間の条件』でも『兵隊やくざ』でも、実際に体験し>>続きを読む
デヴィッド・リンチ作品の中では本作と『ストレイト・ストーリー』が好み。嗜虐・被虐の描写よりも、カイル・マクラクランがクローゼットの中からそうした光景を窃視する眼差しにどきどきする。また、その舞台となる>>続きを読む
ティモシー・シャラメは間違いなくスターだ。そして老境に入ったヒュー・グラントの吹っ切れた怪演も素晴らしい。極彩色のファンタジー世界は『虹の彼方に』以来の伝統の上にある。
オープニングでクレジットタイトルを全て流すと、老夫婦が2つの窓を隔てて会話しベランダで朝食を取る幸福感のある場面から始まる。その後は、心臓を患う夫と認知症の妻がそれぞれ死に向かうプロセスが冷徹に描かれ>>続きを読む
警察に捕えられ、拘置所に搬送されるまでが心底怖い。叫んだり暴れたりせず茫然自失のまま、何度も妻に連絡を取ろうとするヘンリー・フォンダ。保険会社内の事務員たちの表情や目配せ、フォンダを犯人と決めてかかる>>続きを読む
よき。ばらばらに暮らす家族や隣人の中でいちばんワリを食っているミシェル・ウィリアムズ。ギャラリーでの展示を控えて、そのモヤっとした気持ちが、シワい表情と猫背の姿勢に現れている。ぼんやりした物語は、猫と>>続きを読む
ドラキュラを演じるニコラス・ケイジが心底嬉しそうに見えて吉。ケイジと同じくらい濃い顔立ちのショーレ・アグダシュルーが、ケイジと渡り合うところがもう少し欲しかったかな。
引き締った日本製フィルム・ノワール。オープニングの地下水道から気合が入っている。倉庫屋上の立ち回り、霊安室内のサスペンス、トルコ風呂施設内からボイラー室内に至る立ち回り、いずれも見事だ。霊安室内でフラ>>続きを読む
これは好み。闇の多いモノクロ世界で人やカメラが動き、例外はあるけれど、なかなか強度のあるショットが続く。ボーダーシャツにチャドルをまとった美少女吸血鬼は、子供にいくたびも「良い子」かと問い詰めたり、逃>>続きを読む
橋爪功は老年にあって至芸の境地。いい顔をしている。中井貴一も松山ケンイチいい顔だ。ウェルメイドのドラマ。中西健二監督の作風は、40年前の学生映画の頃から変わらない。
理由も経緯も明かされない超能力を備えたチョン・ジョンソは、12年間を精神病院で過ごして成人年齢に達した今も社会性が欠けた子供のままだ。この無敵のキャラクターが、病院を脱出して猥雑な街で暮らしていく。成>>続きを読む
文明が崩壊した近未来のディストピアではなく、人間社会の領域外の砂漠で、人間社会から不要とされた人々が放逐された世界を描く。そこには、人肉食の筋肉集団と文明的な麻薬漬け集団があり、また、どちらにも属さな>>続きを読む
プロットが共有されている『サンダーボール作戦』と比べると劣化版に見えてしまう。全般に大金が投じられていない印象。
惜しみないカネの使い方。重厚かつリアルなセットは言うに及ばず、ダイバーを大量に投入した伝説の水中乱闘場面はアートの域に達している。このシリーズは最新作に至るまで徹底したプロデューサー映画であり、監督の>>続きを読む
屋内や夜の暗さ、ドアの覗き穴からの窃視、焦げるフライパンと奥から人が駆けつける間合い、物言えぬ老女のクロースアップと目の動き、といった台詞に頼らぬ演出が、高齢の同性愛女性カップルの物語以上に印象に残る>>続きを読む
ゴジラが暴れる場面も、人間ドラマ場面もお腹いっぱいの暑苦しさというか熱量。ストーリーや設定に変なところはあっても力技でねじ伏せる。ヘタレな戦闘兵器パイロットは、アムロ・レイや碇シンジに連なる。
チャールズ・ロートンの食えないオヤジぶりが最高だ。好物は刑事事件の弁護で、看護師エルザ・ランチェスターの目を盗んで葉巻を吸い、ブランデーを飲む。小道具ではロートンが階段に設置されたリフトで何度も上昇と>>続きを読む
いいところはある。女三人がだらだらと合宿する一連の場面や、なかなか計画通りに進まない盗みの場面。屋外の人物クロースアップでカメラが反時計回りする(背景が右に流れる)のはトニー・スコットかな。アデル・エ>>続きを読む
シカゴの討ち入りから列車内のガールズ・パーティまでの快調な展開は、老人たちの行楽地マイアミで停滞し、ジョージ・ラフト一味が到着して再び活性化する。粋なギャングを演じたら天下一品のジョージ・ラフト。ラフ>>続きを読む
デヴィッド・フィンチャーの時間感覚とはどうにも相性が悪い。1940年代のフィルムノワールなら70分で足りる内容だ。それを主人公の独白を中心にねっとりと描く。いっそパリで狙撃のチャンスを伺う場面がずっと>>続きを読む
アマプラで再生を始めるまでブレーク・エドワーズ監督・ピーター・セラーズの1974年版と勘違いしていた。スティーブ・マーティンのクルーゾー警部はおバカな中に品もあってよいではないか。お笑い演出もブレーク>>続きを読む
ジャック・レモンが名優顔の演技をキメる。コスタ=ガブラスの『ミッシング』を観たときからこれが苦手だった。そのおかげで、レモン出演作が多いビリー・ワイルダー作品は遠ざけてきた。トム・ハンクスも名優顔の演>>続きを読む
本作の監督はハーバート・ロス、『ザ・フロント』の監督はマーティン・リット。ウディ・アレンが脚本と主役を務めると、監督が他人でもまるっきりアレン映画になってしまう。有名作からの長い引用は、アレン本人だっ>>続きを読む
ファブリス・ルキーニが爺様になっていた。ロメールの『クレールの膝』では十代だったけどね。イザベル・ユペールはギャグの域に入って、小娘二人を圧倒する。グロリア・スワンソンか、ベティ・デイヴィスか。ただ、>>続きを読む
米国のフィルム・ノワールというジャンルにはアンソニー・マンや、エイブラハム・ポロンスキーの『悪の力』といった傑作がひしめいている。これらと比べると、本作の分は悪い。ワイルダーが後年、人情喜劇で大成する>>続きを読む
アレンが当時のパートナーのミア・ファーローの出演を予定していたところ、当の女優から児童虐待で訴えられため、元のパートナーのダイアン・キートンに変更したという曰くあり作品。などという背景を感じさせず、い>>続きを読む
多々良純と初井言栄の父母、三島雅夫の和尚といった曲者たちの中で、一番強烈なキャラは野川由美子。よき。得物を振り回す追っ手から逃げる山内賢が「強盗」と叫ぶと、田んぼの中から菅笠を被った農夫たちが次々と登>>続きを読む
フローレンス・ピューがすごい。がっしりした身体で、喜怒哀楽のみならず、童顔からやつれ果てた顔まで様々な表情を見せる。プライベートのパートナーだったザック・スナイダーの功績なのか。アル中や薬物依存者モノ>>続きを読む
微妙。ロバロドはクリストファー・ノーランを目指しているのか。あるいは、くだらなさの中に崇高さを見せる持ち味から離れて、世間的な巨匠になろうとしているのか。
鶴見辰吾や尾美としのりのように中坊たちに近接する世代や、教員の三浦友和は登場しても、中坊の親たちは絡まない。親子関係を抜きにした中坊たちだけのドラマ。相米慎二の映画で、俳優たちは全身をカメラにさらす。>>続きを読む