satoshiさんの映画レビュー・感想・評価

satoshi

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ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)

4.3

 本作は、ディスコミュニケーションの映画だと思った。主人公のルーカスは、アイスランドに教会を建てるべく過酷な大地に足を踏み入れるが、結局、最後まで現地住民とコミュニケーションをとろうとしない。それが結>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.6

 濱口竜介監督の最新作。『ドライブ・マイ・カー』のときに音楽を担当していた石橋英子さんのライブ用サイレント映像から生まれたという特異な経緯を持つ映画。俳優は無名の人を採用しており、主演の大美賀均さんに>>続きを読む

マッドマックス2(1981年製作の映画)

4.4

予算が増え、よりマッドな世界観になった続編。マックスは前作の出来事により心を閉ざし、世界を放浪している。メル・ギブソンがこのマックスを好演。役者としての彼は本当に凄い(人柄としては最低だが)。彼は人間>>続きを読む

シティーハンター(2024年製作の映画)

3.6

 とにかく鈴木亮平が完璧すぎた。体も作り込んでるし、何より「動き」が完全にリョウなんですよ。トレーニングしたという銃捌きとかあまりに動きの手際が良すぎるし、ギャグ時の動きも完璧。声も意識的に神谷明に寄>>続きを読む

蛇の道(1998年製作の映画)

4.3

新作の予習として。この頃の黒沢映画が持つ禍々しさが、高橋洋の脚本を得ることで何倍にも拡張されている。廃屋という限定空間を活かしたカメラワーク、哀川翔の不気味な怪演、香川照之が徐々に出していくサイコ感。>>続きを読む

マッドマックス(1979年製作の映画)

4.2

『フュリオサ』に備えて。皆が想像しているような「北斗の拳」的世界観はまだ鳴りを潜め、マックスがマッドになる過程を描いている。マックスは最後に復讐を遂げるわけだけど、それは決してハッピーエンドを意味しな>>続きを読む

座頭市(2003年製作の映画)

3.6

北野映画としては珍しい勧善懲悪のエンタメ作品。風貌含め、市はひたすらに「異質」で、この映画内の悪を全て一掃する。一方、相対する浅野忠信と夏川結衣はやはりコミュニケーションが不足し、悲劇的な結末を迎えた>>続きを読む

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

3.2

 事前情報と景気のいいポスターと予告から、公開前よりバカ映画と認知されていた本作。しかし見てみると、想像を超えたバカバカしさを備えた怪作だった。バカバカしさもここまでくればもはや清々しさすらある。>>続きを読む

Dolls ドールズ(2002年製作の映画)

3.6

人形浄瑠璃を題材にした映画で、北野武なりの愛の物語。やはりここでも描かれるのは殉教精神であり、最後には悲劇が待っている。しかしそれは男女間のコミュニケーションの不足がもたらしたもの。3組の内、2組は不>>続きを読む

名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.2

 見ていて、本当に俺は『コナン』シリーズのいい客だなとしみじみ思った。本作は1本の映画として見ると本当に酷くて、ミステリーとしてはもちろん、アクションアニメとしてもダメ。脚本も色々な要素がとっ散らかっ>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

4.0

 山田太一の原作も大林宜彦の映画も見ていないが、評価は高いし、昨年亡くなった山田太一の追悼的な意味でも見てみた。全体的に端正な出来の映画だと思った。35mmフィルムで撮影した映像は、どこか夢の中にいる>>続きを読む

菊次郎の夏(1999年製作の映画)

3.8

 北野武としては珍しいハートフルな話。とは言え、この菊次郎が曲者で、たちの悪いチンピラでしかない。「根は良い奴」とかでもなく、割と本当にダメ。寅さんをリアルにやったらこんな感じなんだろうな、と思った。>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.8

 男性側のキモさを抜いた新海誠、または『秒速5センチメートル』。あるいは、よしながふみ先生の漫画「環と周」の一編。

 子供の頃に分かれてから12年後とそのまた12年後を舞台に、「結ばれなかった」2人
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リンダはチキンがたべたい!(2023年製作の映画)

3.9

 『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』の監督作なので見た。日本のアニメーションとは全く違う表現をしていて、映像がまずとても楽しい。内容的には、最初にシリアスめな下りがあるのだけど、その後、お母>>続きを読む

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.3

 終電を寝過ごし、深夜の街を歩いて帰宅する女性を描いた本作。あくまで個人の感想だが、テーマなどの全体的な映画の締まり具合?は『Here』の方が洗練されてると思った。しかし、本作には別の魅力がある。それ>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

4.2

パズ・ドゥヴォスという、ベルギーの監督の映画。見ていて、エリック・ロメールやギヨーム・ブラック、ケイリー・ライカートを強く連想した。非常に静かだけど、ショット1つ1つが雄弁。内容としては、移民が多いベ>>続きを読む

BROTHER(2000年製作の映画)

3.3

「ファッキン・ジャップくらい分かるよバカ野郎」

基本的にいつもの北野武映画なのだけど、日米英合作ということで、どこか上手く作れていない印象を受けた。何というか、北野武が製作側の意向になるべく沿って「
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アイアンクロー(2023年製作の映画)

4.3

 私プロレスについては全く知らない人間で、フォン・エリック・ファミリーと言われても「誰それ?」という感じでしたので、見るつもりはまるで無かったのですが、絶賛評が多々見受けられたので鑑賞しました。

 
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.7

 アメリカ公開から8ヶ月。ようやっと公開された本作。期待値は上がりまくっているわけだけど、個人的には、その期待値を大幅に超えてきた、クリストファー・ノーランの集大成にして最高傑作だった。一応2回見まし>>続きを読む

ペナルティループ(2024年製作の映画)

3.7

 『人数の町』の荒木伸二監督の新作。前作同様、本作も「世にも奇妙な物語」みたいな話で、ループもの。最初は割かし普通の復讐劇として始まるが、ループが明らかになってから展開が二転三転していく。

 ループ
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HANA-BI(1997年製作の映画)

4.0

内容はほぼ『ソナチネ』なわけだが、『ソナチネ』とは違い、非常に「説明的」な映画だと感じた。台詞は最小限だが、余命僅かな妻、過去の事件のせいで刑事を辞めざるを得なくなった刑事、半身不随になった元相棒、久>>続きを読む

コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ー(2022年製作の映画)

3.8

 女性の中絶が法的に許されていない時代、アンダーグラウンドで女性の中絶を助けていた団体「ジェーン」の物語。彼女らの活動はその後、「ロー対ウェイド対決」で実を結ぶ。本作はジョイという女性と、団体のリーダ>>続きを読む

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章(2024年製作の映画)

4.2

 浅野いにおの漫画を原作とした映画。前後章に分けて公開という強気の興行。いにお先生のことは高校生の頃に「おやすみプンプン」を読んで「キモい・・・」と思って以降、生暖かい目で見守ろうと思っています。「デ>>続きを読む

夕陽のガンマン 4K復元版(1965年製作の映画)

4.2

こういう名作を映画館で見られる。感謝である。流れ者の賞金稼ぎ同士が手を組み、悪党を退治する。シンプルなストーリーながら、復讐、男の友情が描かれる。顔のドアップ、ゆったりとした尺の取り方、静から動へ転じ>>続きを読む

あの夏、いちばん静かな海。(1991年製作の映画)

4.2

タイトルの出し方がズルすぎる。これに久石譲の曲は破壊力抜群だろう。これまで殺伐とした映画を撮ってきた北野武、初の恋愛映画。ヤクザもたけしも出てこないけど、台詞を極力廃した詩的な語り口、キタノブルーの発>>続きを読む

Kids Return キッズ・リターン(1996年製作の映画)

4.2

「バカ野郎、まだ始まっちゃいねぇよ」

とりあえず、たけしの不良の解像度が高過ぎる。金子賢演じるマサルのリアリティがスゴい。本作では、これまでの北野映画で描かれてきたことを反復しつつ、最終的に真逆の結
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神さま聞いてる?これが私の生きる道?!(2023年製作の映画)

3.9

 『スウィート17モンスター』の監督の最新作ということで鑑賞。思春期真っ只中の女の子の話で、ちょっと背伸びをしたがる自分はいけてると思ってる女子とか、体の成長や、クラスの気になる男子言い合いっこ、同級>>続きを読む

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)

4.4

 絶賛評を見かけたので鑑賞。金子修介監督の作品は『平成ガメラ』しか見たことなかったのだけど、これがメチャクチャ面白かった。

 序盤は悪ガキ達が人生逆転を狙ってシリアルキラーを脅すという、90年代に制
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.7

 素晴らしかった。『PARTⅠ』のときは原作未読で臨んだが、今回は時間もあったので原作を読んだ上で鑑賞。それが功を奏し、比較して見ることができ、本作に対する解像度が上がりました。

 本作では、貴種流
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アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

3.9

 『正欲』とか今やってる「不適切にもほどがある!」も似たものを目指していると思うんだけど、本作の方がずっと洗練されていると思う。要は、「多様性」とか「差別はよくない」というマイノリティへの配慮が、自分>>続きを読む

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)

4.3

 ガイ・リッチーらしくないドシリアスな戦争映画。持ち味の軽妙な会話とトリッキーな構成は鳴りを潜めている(とはいえ、端々にリッチー味のあるシーンはある)。代わりに、終始「いつ撃たれるか」という緊張感の漂>>続きを読む

ARGYLLE/アーガイル(2024年製作の映画)

3.2

 マシュー・ヴォーンがまたまたスパイ映画を撮った。もう『キングスマン』があるんだからいいじゃんよ・・・と思ってたら、最後で「そういうことか!」となった。シャマランと同じく彼も「俺ユニバース」を構築して>>続きを読む

みんな〜やってるか!(1994年製作の映画)

3.8

『ソナチネ』までが嘘のように、終始、漫画的な下らないギャグ、パロディが続く。どれもがこれまでの北野映画にあったような四コマ的なギャグの詰め合わせ。最初は戸惑ったものの、見ているうちにこれが癖になってき>>続きを読む

マダム・ウェブ(2024年製作の映画)

3.2

 映画の出来としては間違いなくポンコツの部類で、ツッコミどころを挙げればキリがない。敵がよく分からないし、ミャンマーの下りいらんだろと思うしというか簡単に行きすぎだし、主人公はずっと盗んだタクシー使っ>>続きを読む

ネクスト・ゴール・ウィンズ(2023年製作の映画)

3.3

 タイカ・ワイティティは『ジョジョ・ラビット』が大変良かったので少しは期待して見に行ったのだけど、これがまた何とも言えない微妙な映画だったものだから困る。

 本作を見てまず思ったことは、タイカ・ワイ
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ソナチネ(1993年製作の映画)

4.7

傑作。素晴らしい。これまで北野武が積み上げてきた要素が全て、高密度で詰まっている。「死」をここまで美しく描いた映画はあまり無いと思う。北野映画はここでひとつの完成形&頂点を極めた、のかな。

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