crnさんの映画レビュー・感想・評価

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秋立ちぬ(1960年製作の映画)

4.0

大人に振り回される子どもの人生。子どもにずっと寄り添おうとすることができない大人たちに重ねて、カブトムシを見つけた秀夫の笑顔から突き落とすラスト。人間味がある作品かと思いきや、そこそこ残酷に終わる。そ>>続きを読む

コロンバス(2017年製作の映画)

4.0

建築の街に自分を留めるか否かを、別の方向から悩む2人の話。建築の話から少しずつ自分を吐露し、それぞれが背負っていくものと決断が見えていく丁寧なつくりが良かった。

直線の際立つ建物と、洗練されたその内
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世界のはしっこ、ちいさな教室(2021年製作の映画)

4.0

僻地、自然災害、貧困、慣習などにより、学び続けることが困難な子どもたちに、教育を届けるためにこれだけ奮闘している教師たちがいることに頭が下がる思い。生徒と言葉が通じない、10日間だけの移動教室、生活苦>>続きを読む

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)

3.5

映画を光として捉えた少年が、それを自力で再現しようとする奮闘ぶり想像以上で魅せられる。演出がやや過剰なのは自伝的物語ならでは。光に夢中になった時間、映写機のリサイクルを眺める無力感、そして否の打ちどこ>>続きを読む

ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気(2015年製作の映画)

3.5

こうした一つひとつの事例の積み重ねが、時代の変化になっていくのだと感じる作品。そしてその事例には、ただただ当たり前のこととして公平性を求めた人たちがいて、その主張を理解し共に行動した人たちがいることも>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.0

3つの人生を生き、輪廻転生ではなく有のための無に心惹かれたヤンが、機能を停止した後のお話。その存在が無くなったことで、誰かの中に一部として存在するようになっていた。ミカが接木を通して家族を理解し、中国>>続きを読む

シリアスマン(2009年製作の映画)

3.5

コーエン兄弟×ユダヤ教の不条理劇。外部から襲ってくる訳のわからない事態に対して、人間はあまりに弱い。真面目な男が、次々襲ってくる災難に真面目に対処しようとするうちに、自身の善悪の価値観を揺さぶられてい>>続きを読む

スーパー!(2010年製作の映画)

3.0

展開が良い意味でめちゃくちゃで引き込まれたし、しんみりするラストのまとめ方も上手。ただ、ストーリーや見せ方の面で、私の許容範囲を試されたような気持ちになる。自己肯定感の欠如からくる主人公の狂信的で非道>>続きを読む

そして、ひと粒のひかり(2004年製作の映画)

4.0

経済格差という言葉の先で、低所得国で弱い立場にいる者が搾取されていることを具体的に見せる作品。始終、主人公マリアの命が守られるのかとはらはらし、緊張感からストーリーに引き込まれた。

米国に移住した人
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シネマ・ヴェリテ(2011年製作の映画)

3.5

1970年代からリアリティショーがあったとは。当時はドキュメンタリーという位置付けのはすが、製作陣の介入が過度だったよう。世間の目に負けずにのしあがっていくという展開が、さすが選ばれしアメリカ代表家族>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

3.5

できることはたくさんあるけれど、何かしっくりこない。追い求めているものが何か分からなくとも、「これは違う」と気づいたら無視できない。そんな彼女に共感できるかどうかで、作品の評価に影響しそう。

12章
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グザヴィエ・ドラン バウンド・トゥ・インポッシブル(2016年製作の映画)

3.5

まだ若いドランなので、ドキュメンタリーならではの複数視点からその人を浮かび上がらせるとよりは、人生の一つの章を本人と近い人々が振り返っているのを眺める感じ。監督としての彼は、自身の作品の雰囲気とは違っ>>続きを読む

ローラーガールズ・ダイアリー(2009年製作の映画)

3.5

小さな田舎町で退屈そうにしていた女の子が、熱中することを見つけて自分の道を選択していく物語。自分の意思で自分の町から出ていくときの、バスの中から手を振るシーンが象徴的でよかった。

ローラースケート競
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ハリー・ポッター20周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ(2022年製作の映画)

4.0

10年間を振り返る100分のインタビュー。
子どもたちが子どもらしくいられるよう大人たちが気遣った現場だったようで、主演3人の感謝の涙に自然とつられてしまう。世界中からの高い期待に応えて、映像化が難し
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また、あなたとブッククラブで(2018年製作の映画)

3.0

ブッククラブが題材の映画は好きなことが多いのだけれど、この作品には読書ならではの面白さがあまりなかった。ワイン女子会を見ていた印象。こういう楽しい老後があったらいい。

福田村事件(2023年製作の映画)

4.0

森達也監督が劇映画を撮るのが意外に思えたけれど、今この時代に100年前の様子を見せるための方法だったのだと納得。当時には恐らくなかった視点が色々盛り込まれていたのは気になったけれど、ジャーナリストとし>>続きを読む

ルル・オン・ザ・ブリッジ(1998年製作の映画)

3.0

Smokeが良かったので鑑賞。全体の独特な雰囲気に引き込まれていたら、オチに唖然としてしまった。彼の家族との原体験や、不思議な石を巡る一連のことはなんだったのか、なんでもなかったのかが掴めず、原作を読>>続きを読む

ネコと元カレとロマンス(2021年製作の映画)

3.0

邦題が全てを語る作品。
欧米式のクリスマスムードの中に猫がたくさんいるのを見るのは、何の難しさもなくて気楽。猫は皆美しい子ばかりだけれど、人間たちは美しすぎなくてリアリティがあった。

国葬(2019年製作の映画)

3.5

2時間ちょっと葬儀の様子を断片的に眺めるだけで、ソ連やスターリンの知らなかった側面が浮かび上がってきた。

ソ連の国土の広大さにまず圧倒される(オープニングとエンディングは、映画的にとても魅せる演出)
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ドンバス(2018年製作の映画)

4.5

2024年2月以降はただのフィクションと思えなくなってしまった作品。始まりと終わりが繋がったとき、絶望感が残った。私にはブラックコメディとは呼べない。

紛争が日常の中に隅々まで入り込み、その地にいて
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江分利満氏の優雅な生活(1963年製作の映画)

3.5

平和な今、豊かになっていくのに、なぜか面白くないエブリマン。コメディのかたちをかりて、若き日の個人と集団の体験に折り合いをつけられない戦中派の哀しさが描かれるとは意外だった。

タイトルからして面白い
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アウステルリッツ(2016年製作の映画)

3.5

ザクセンハウゼン収容所を見る人々を見る作品。

収容所の入口から始まり、多言語のガイドを時に挟みつつ主要と思われる内部を一つずつ見て、入口と同じ出口へと進む90分。この間に、次々と疑問が浮かんでくる。
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粛清裁判(2018年製作の映画)

4.0

労働者賛美、知識層との分裂への煽り、フランスがソ連政権打倒を計っているとの示唆、外国との内通はバレるという脅し、経済政策の失敗の責任の押し付け、などを通して、社会主義という虚構に大衆をさらに組み込んで>>続きを読む

パリ13区(2021年製作の映画)

3.5

身近にいた人を失っていった経験を持った若者たちが、歪な始まりから新たな関係を築いていくお話。3人がそれぞれの性格を剥き出しにして、思わぬ方向に関係性が進んでいくのがおもしろかった。オリジン、職業、生活>>続きを読む

妻よ薔薇のやうに(1935年製作の映画)

4.0

成瀬らしい女性主体の人情劇。本妻と妾とその娘たちの人柄や感情の出し方の違いが豊かで、物語に引き込まれる。実母の負けを認める娘の冷静な言葉で終わるのも、思い切りがよい。

今の時代では見られない物語だけ
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スモーク(1995年製作の映画)

4.0

NYのタバコ屋に会した人々の人生に溢れる思いやりある交流。どの登場人物も家族との折り合いが悪かったり、明確に孤独を抱えていて、それでも他人の優しさによって善く生きていた。再現映像のようなエンディングの>>続きを読む

サマーフィーリング(2016年製作の映画)

4.0

大切な人を失った二人とその周りの人々の三年間の物語。三度の夏を三都市で描くという切り取り方が素敵。

人物の行動や言葉からゆっくり丁寧に変化を見せ、説明過多でない物語の進みが心地良かった。家族や友達、
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オリ・マキの人生で最も幸せな日(2016年製作の映画)

4.0

世間的に大きなドラマの後ろで、たしかに進んでいくあたたかいストーリーが素敵だった。オリ・マキの周囲で勝手に盛り上がる人たちの側にいた鑑賞者が、だんだん彼の心に寄り添う側になっていくのがおもしろかった。>>続きを読む

土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)

3.5

所謂「丁寧な暮らし」の数段上をいく農的暮らし。もっと食べ物と仏教の教えについて書かれていた原作の雰囲気は残して、生きていくというテーマを伝える人間ドラマになっていた。

沢田さんのナレーションの声が心
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天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~(2019年製作の映画)

3.5

一つの時代で、それぞれの分野でよく知られる人々に、「あなたは創造的か」と問うていくプロジェクト。原題を昇華してこの邦題にした気持ちが分かった。多数のインタビュー素材を方向性をもってまとめており、アニメ>>続きを読む

淪落の人/みじめな人(2018年製作の映画)

4.0

この2人のあたたかい世界を壊すためだけの演出をしないでと思いながら観る。夢を見ることを再び許された人と、夢を応援することで生きる希望を見出す人。2人の純粋さがまぶしかった。

Oasisのような夢の世
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ツユクサ(2022年製作の映画)

3.0

誰かにとっては過去の不幸の象徴であったものが、別の誰かにとっては幸せへの希望になることもあるように感じさせる作品。自然の光が満ちた画面と、港町の風景が明るい雰囲気で良かった。小林さんの恋愛モードが新鮮>>続きを読む

コングレス未来学会議(2013年製作の映画)

4.0

50年以上前のディストピア小説の世界に、現代が近づいていっていることにひやりとする作品。AI俳優やメタバースだけでなく、人生観も含めて幻想世界寄り。

幻想世界で人は気の合う人とだけ共に生き、ほぼ命の
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ビリーブ 未来への大逆転(2018年製作の映画)

3.5

RBGが最初の性差別のケースを勝つまでの話。わずか数十年前まで、あれだけの数の法律が性差別を含んでいたことに驚く。歴史的な性別役割分担を前提とした判例の積み重ねに対し、時代の変化という視点で挑めたのは>>続きを読む

マッチポイント(2005年製作の映画)

4.0

人生において運が過小評価されているという考え方は新鮮で、それを描く脚本も見事。作品を通してずっと運の影響力が強調されていたのに、男に懲悪があると当然に期待したことを鑑賞者が気付くラストが良かった。罪と>>続きを読む

夏の終り(2012年製作の映画)

3.0

過去も今も、恋愛の中にずぶずぶと生きる女の話。観終わって、女の独特の喋り方と声がずっと耳に残る。
短いカットの連続など物言いたげな脚色が重なり、時間を操作して独特の雰囲気につながっていた。昭和の街や自
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