タイを舞台にしたモキュメンタリーホラー。女神バ・ヤンの巫女である女性に密着したドキュメンタリーを撮る中で、呪いと信仰と血に塗れたとんでもない惨事に巻き込まれていく……
ゆっくりじわじわと物語が進むにつれて不穏さ不気味さヤバさが高まっていき、気づかない内にもう取り返しがつかなくなっていた……そんな感じの絶望系ホラーです。
雰囲気で怖がらせるJホラーとは対極にあるパワータイプのホラーですが、その見せ方が中々極まってますのでめちゃくちゃ怖いです。
そしてとにかくこの作品、役者が凄い。
そこまでやれるかってくらい不気味に演じきります。
特に邪悪なものに取り憑かれたミンは、本当におかしくなったんじゃないかってくらいの演技で逆に役者が心配になります。
大丈夫なのかこれ。
小細工を使わず全力投球で恐怖をガツンとぶつけてくる感じは非常に良かったです。
あと霊能力者フェチとしてはラストの大儀式をしかけた祈祷師サンティがお気に入り。
一見胡散臭いペテン霊能力者と見せかけて実はホンモノ、という定番のポジション。
しかも日本語吹替は杉田智和氏。
末路まで含めて大好きです。
一方でモキュメンタリーとして見ると、ちょっと不満点が多いかなと。
映画としての完成度は高いものの、その分フッテージ作品であることや、ドキュメンタリー撮影である設定は割と置いてけぼりな感じはしました。
(これは今作に限らずモキュにつきものな課題ではありますが)
特に白石監督作品なんかを見慣れてますとカットが多いだけでモキュ度がグッと下がる気はします。
冷める、とまではいかないものの「もう少し騙してくれよ」とは思いました。
あと撮影クルー意外と多いな!
それから二転三転する物語がちょっと全体的に長過ぎる気がしました。
色んな要素があるのもいいんですけど、もっとネタを絞って短くした方が完成度は高まったように思います。
そんなわけでラストバーゲンセールのような展開含め作品全体のスケール感には圧倒されますが、モキュメンタリーホラーとしてはまぁまぁ良作かなぁ……
くらいに思ってたところ、最後にニムのインタビューシーンが流れます。
あれでこの映画がグッと好きになりました。
結構しんどい映画ですが二周目見たくなったくらい。
こういうの、とても好きです。
犬好き以外には誰にでもオススメできる映画です。