メモ魔

ミラベルと魔法だらけの家のメモ魔のレビュー・感想・評価

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
3.8
与えられなかった子との関わり方って難しい。
なにか目に見えて秀でてる人間ほど脚光を浴びやすいのが現実だ。
でもこの映画が伝えたい部分はそんな浅い部分じゃないと信じたい。
ミラベルの家族には一人一人魅力が、そしてミラベルにもまた、他人に誇れなくたって自分が自分であるための魅力が必ずあるはずなんだ。

面白いことに、その魅力は与えられるものより自分で悩み抜き得たものの方が輝きを増し彩を与える。
ミラベルはそう、悩む才能を持って生まれた子だ。

そうかミラベルには、魔法なんかじゃ到底叶えられない力を授かったんだな。
それは人より優しくそして寄り添う力。
この力は与えられるだけじゃ叶わない力だ。
人より数倍の苦労と苦痛を経験し、その経験を周りにはして欲しくないと思える広い心を持って生まれないと他人に優しさを与えることはできない。
ミラベルの家はミラベルがその器の広さを持っていると感じて、あえて辛い現実を与えたのかもしれない。それがこの村への1番のギフトになると信じて。

人一倍人のためになりたいって思えるその心が十分に特別な心だと思うのだけど。
こういう目に見えないものは人に認められにくく、そして自分で維持していくにはあまりにも心が持たない。
ミラベルが[能力を持たない自分]に魅力を見つける時が来るのが楽しみ。

みんな外見だけ見て、その人が完璧だと思い込んで。でもその完璧は与えられたものだから、あの人は自分たちみたいな苦労なんてかけらも知らないのだろうと。
勝手に想像して勝手に遠ざけていく。
努力して勝ち取ったものが輝かしいほど周りは勝手に自分を卑下し始める。
だから努力は孤独だ。理解は得られないし、結果が得られても当たり前だと烙印を押されて、それでも完璧を演じ続けなければならない。
その重圧を背負いながら生きてきたイザベラに少し同感する。
イザベラからしたら、
[何も貰わなかったから完璧じゃなくてもいい]と思っているミラベルが気に障ったのかもしれない。
じゃあ自分は貰ったからこんなに周りに気を遣わないといけないのか。と。
貰わない人間に多少のあごがれを抱いてしまう不完全な自分にも嫌な気持ちを感じてしまい、自分がどんどん嫌いになっていく悪循環があったのかもしれないな。

そんなイザベラが、
[不完全でも綺麗なもの]
に気付けたこのシーンはかなり好き。

炎の源は双方の愛情なのかもしれない。
おばあちゃんは奇跡にばかり目がいってしまい、いつの日かその炎が何のために必要だったのか、それを忘れてしまったんだな。
それを今、壊れてから思い出したんだ。
力は家族を守るために。力は家族を救うために。
そう、家族が力のためにあるわけじゃないんだ。

形が大事なんじゃない。形にすがる関係ならもうすでに壊れてるのと一緒だ。
形を作る源を持っているのはいつも人と人の繋がりだ。
形が壊れたって、関係が崩れないのは、。
繋がりがあって初めて形になるからだ。
今繋がりを確かなものにしたミラベルとおばあちゃんは、たとえ形なき家を前にしても、魔法なんてなくてもきっと魔法があった頃以上に人と人が助け合う村を気づいていくだろう。
そう、その繋がりは魔法なんかよりもっと奇跡に近いことなのだ。

総評
イザベラと心を通わせたところからの怒涛の展開がかなり好印象だった。
奇跡ってのは0から生み出すものじゃない。そこら中に転がってるけど、日々の忙しさやしがらみによって埋もれてしまってるだけだ。
その埃をはらえるのはそう、愛情や人と人との繋がりだ。
その奇跡に気づけた時、自分って存在もまた奇跡と同じ、価値のある人間なんだと思えるようになる。
この映画はそんな
[愛情から生まれた自分の存在が奇跡そのものなんだ]
と気づかせてくれる。そんな映画。

3.8点
かなり面白かったし涙も流れまくったけど、序盤のおばあちゃんを悪く描きすぎている点と人間の表面的な部分が序盤は多く描かれていたのが個人的に受け入れられなかったので3.8点。
全部あなたのせいなんて孫に言うおばあちゃん、ほんと信じられないんだが。
メモ魔

メモ魔