メモ魔

グランツーリスモのメモ魔のレビュー・感想・評価

グランツーリスモ(2023年製作の映画)
3.6
グランツーリスモ

壮絶な人生を淡々と描くのは簡単だ。
事実にあったことをそのまま映像に起こせばいい。
素晴らしい作品とはその事実が組み上がる工程に【人間の苦悩】を描くことだ。

この作品にはそれを感じれなかった。
ヤンはレースで勝つために何を苦悩したのか。どこを工夫したのか。その工夫に行き着くまでにどんな工程を築いたのか。
この映画はそれが欠落してる。
というかその苦悩が全部【シミュレーションゲーム時代】に集約されてしまっている。
この映画は技術がある人間がそれを上手く外へ出力する工夫をする映画だ。技術を習得する映画ではない。持っている人間がそれ相応の位置へ行く過程を描いたものだ。

これは人の好みだが、自分は【実力や技術が無いものが、凡人の成す想像を絶する努力の末に結果を掴み取る映画が好きだ。】
グレイテストショーマンみたいな。

だからこの映画を【内容に関しては】胸熱で見ることはできない。

しかしだ。
レーシングシーンは一級品。
コーナーで内側に食い込むボンネットがこれほど輝く瞬間を自分は知らない。
加速するごとに増して行く大気の壁。
減速に伴う圧倒的慣性。
この両方に押し潰されながら、レーサー達はスピードの向こう側に手を伸ばす。
崖の一歩手前を全速力で走るようなもんだ。
これに胸が躍らない人間はいない。
少なくとも自分の胸はテレビのコントローラーにビビを与えるほどに影響されちまった。

もうちょい批判させてもらう。
この映画、何かドラマのような感覚が拭えないんだが。FPSとか画角の問題か?
なにか重厚感を感じない。
どこかの話で、映画はあえてFPSを下げてるってのを聞いた30未満だったような、、。FPSが高すぎると現実感が増して映像の向こうに想像の余地が無くなってしまうという。
まさしくそれをこの映画に感じた。何か、現実に起こったことをそのまま見ているような、、ホームビデオを見ている感覚に晒される。

3.6点。
レーシングシーン紛れもない。一級品だが、それならジャンキーだがワイルドスピードを見れば良いし、内容に関しては良い点はなかった。

最後に。
グランツーリスモを幼少期、ないし人生のどこかでやりこんだ人間がこの映画を見たのなら。
最後腕を上げるシーンは涙なしには見れない。
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