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ハウス・オブ・グッチのdaisukeookaのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
4.0
ガガ様のことは信奉している。V6の「愛なんだ2018」で引っ込み思案の日本人高校生に1対1で真摯に応えたガガ様はまさにスターだった。自らが弱く小さかった過去をさらけ出し、温かく静かな声で彼を勇気づけていた。

「スター誕生」ではダンスポップというより聴かせるバラードと共に演技も披露、人間としての厚みと実力が違う。演技という難題も強烈なグリップでモノにしてしまった。そんな彼女のメジャー2本目の映画が「グッチ」だ。観ないわけにはいかないだろう。

それはもはや「戯画」。リドリー・スコット御大の演出も萬力のグリップ。ガガ様をはじめとするメインキャストもみんな濃い。そんな彼女ら彼らが全員欲にまみれて愚かというところがたまらない。贅を尽くした服、車、住居、食事、けれどそこに「挑もう」とか「頑張ろう」とか全然ない。初代が築いた遺産にタカって食いつぶしていくだけ。

ガガ様演じるパトリツィアは結局何が欲しかった?三代目のマウリツィオに出会ったときはまさかグッチ家を乗っ取ろうなんて思ってもみなかったはず。愛する男の情けなさに直面し、その場その場で感情と浅知恵のままに周囲を翻弄していくわけで、翻弄する側もされる側も欲にまみれてて迷いがなくて仕事が出来なくてめっちゃ「人間」ぽい。いやマジで仕事せえよみんな。

欲まみれでリスペクトに足らない、ただ「グッチ」でしかない人間たちを、あそこまでの資材と技術で描きぬく仕事がスゴイ。そして気持ち良いほど「残らない」。それこそがブランドファッションや映画をはじめとする「娯楽」の本質。作った人間たちの汗や苦労など一顧もされずに使われては捨てられて忘れられていく。この映画は、そこに「在る」だけでその本質を体現している。
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