Miller

オールドのMillerのネタバレレビュー・内容・結末

オールド(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

夫婦とその子供の姉弟は、海沿いのホテルへバカンスへ訪れる。
そのホテルの従業員から、プライベートビーチへ行くプランを提案された一家は、プライベートビーチへ行くことになる。
ビーチ行のバスには、中年の医師とその母、若い妻と娘が乗っている。
岩壁の合間を抜けてたどり着いた先は、平穏な時間の流れる理想的なビーチ。
二組の家族は喜び、それぞれの時間を過ごすが、海に浮かぶ若い女性の死体を見つけたことから、不可思議な事態に巻き込まれていく。

閉鎖された空間で少しずつ精神が変容し、猜疑心によって最悪な場合は、殺戮に至る物語もあるが、この映画は身体から変容していく。
少年は青年になり、青年は壮年、壮年は中年と老化していく。

本来の時間の流れと自分に訪れる時間の流れの違いは、怖れを招くが、その空間から逃れることはできない。
老いと共に認知はゆがみ、感覚は低下する。
その空間から逃れようとしたもの、その怖れの混乱の中にいるものにも死が訪れる。

主人公夫婦にもまた、死が近づく。
夫は視覚、妻は聴覚の機能が低下する。
このビーチに来る前には、夫婦は離婚の危機にあった。
死が近づくなか、二人は喧嘩のことも忘れていく。
互いを愛する人と認め、子供たちに見守られながら生を終える2人。
2人を見送った姉弟は、昨日まで2人から見守られながらしていた砂遊びをする。

その後、唐突な展開を見せ、この映画は終わる。
誰もが感じるが、先のものと感じてしまいがちな老いや死の恐怖を、老いるための時間が圧縮されることで、老いと死が自分の今の時間の地続きのものであることを感じさせられる。
閉鎖空間で起きるワンアイディアの話であるが、閉ざされた空間で時間が経過することでしか到達することが出来ない、それまでの人生を受け入れるようになる夫婦の姿が描かれることで、ジャンル映画以上の余韻が残った。
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