Miller

ザ・ウェイバックのMillerのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ウェイバック(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

喪失感を抱え自堕落な生活を送る男が、かつて情熱を燃やしたバスケットボールチームの監督になり変化の兆しが現れる物語。


本作のギャビン・オコナー監督と「ザ・コンサルタント」に続き、2作目のタッグを組んだベンアフレックは、今回のような喪失感を抱えた男が似合い、とても絵になる俳優だと感じる。
表情や佇まいもそうだが、発達した筋肉もアクション映画の逆境を跳ね返す男ではなく、逆境に耐え黙々と作業に励む孤独な男を思わせる。


主人公のジャックは、妻のアンジェラと離婚し、孤独で自堕落な生活を送っていた。
毎日バーに入り浸り、アルコール中毒のような状態になっており、家族から心配されるが、家族を遠ざけてしまっている。
そんなジャックのもとに母校の高校から、バスケットボールの監督としての依頼が来る。
ジャックは高校生の頃、バスケットボール選手として活躍し、最優秀選手に選ばれるほどの才能の持ち主であった。
ジャックは断るつもりでいたが、断りきることが出来ず、監督としてバスケットボールと、高校生の選手たちと向き合うようになる。

ジャックは選手たちに、戦略やプレースタイルだけでなく、規律正しさやメンタル面での指導も行っていく。
選手達もそれぞれの境遇があり、それを知ったジャックは自分の過去についても選手に語るようになる。
断酒し、監督として再びバスケットボールに情熱を注ぎ始めたジャックだったが、ある出来事をきっかけに辛い過去を思い出し、自分を制御できなくなってしまう。


この映画は、何かを克服したり、問題を解決する様やその過程が描かれるのではなく、その問題に向き合えるようになるまでの過程が描かれる。
バスケットボールに情熱を注ぐことで問題を解決をすることはできなかったが、その問題に向き合うために必要な自分に変わることが出来たのだと思う。
選手たちと共にジャックが勝利を分かちあう場面でなく、選手にジャックの教えが受け継がれていたことが伝わる場面と、ジャックがかつて手放したバスケットボールに黙々と励む姿で物語が終わるさまは、大仰ではなくもの静かな感動があった。



物語とはあまり関係ないが、ジャックが監督を断る電話をする際に酒を飲む場面で、数回にわたり、冷蔵庫内のビールの数を映し出す場面や、試合ごとに点数を細かく画面に表示する様は、この監督のちょっと偏執的なものを感じた。
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