大林宣彦監督の遺作。
全国公開予定日まで命をつないでおられた監督でしたが、コロナの影響で公開は延期に。
この作品を観るために多くの映画ファンが映画館を訪れる光景を見て欲しかった…
そんな作品をようやく観ることができました。
とんでもない作品を観てしまった!
映画を観てそう思ったのは『2001年宇宙の旅』を観たとき以来。
まさにこの作品は『2020年キネマの旅』
但し寡黙なキューブリックとは正反対の圧倒的な情報量の多さ。
ミュージカル映画、戦争映画、チャンバラ映画、ラブストーリー、SF映画、そして無声映画からトーキー映画まで、ありとあらゆるジャンルの映画を通して、映像、セリフ、スクリーンに溢れる文字、ナレーションが、大林監督濃度300%で次から次へと繰り出されます。
そしてそこに溢れる映画に対する果てしない愛情で、自分の中の映画大好き細胞は休むまもなく刺激され続け、3時間という長尺にもかかわらず、体感的には1時間程度にしか感じないほどのトリップ状態。
観終わったあとにはとてつもない疲労感に襲われました。
以前、『時をかける少女』のレビューで、大林監督のことを日本のタランティーノと称しましたが、それに間違いはなかったと確信した次第です。
作品の舞台は約20年ぶりの尾道。
さらにかつての大林作品出演者が次々と登場し、大林監督ファンには至福の時が続きます。
晩年の監督は戦争の悲惨さを描きながら、平和への想いを込めた作品を撮り続けました。
この作品でも表面的にはそのテーマに変わりはありませんが、「映画は過去は変えられないが、未来は変えられるかもしれない」というメッセージを監督は未来を生きる我々に強く訴えかけます。
一見とっつきにくい、大林監督のファンムービーという評価が多いかもしれませんが、この作品を通じて一人でも多くの人たちに映画の素晴らしさと、その可能性が伝わればいいなと思います。
大林監督の言葉
「人はありがとうの数だけ賢くなり、ごめんなさいの数だけ美しくなり、さようならの数だけ愛を知る」
大林監督。
さようなら。。。