ををた

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティーのををたのレビュー・感想・評価

3.7
小さい子供がアイデアを思いつくとき、大抵それは実現不可能な技術だったり、できたとしても膨大なお金が必要だったり、えてして実現が困難なものであることが多いが、それは勿論あくまで子供のアイデアだからと周りの人は微笑ましく見守るものだろう。
だがしかし、これはそんな子供が財力のある大人になってしまったが故に生み出された悪夢だ。

「美しいビーチと豪華なラウンジのある島でセレブとともに最高の音楽フェスを」という、想像しただけでも壮大なこのアイデア。無論、子供のそれとは違ってさまざまな綿密な計画が必要なのだが、首謀者の若手実業家はSNS映えだけに特化することばかり考え、インフラや宿泊場所についてですら何も進まない。SNSの美しいプロモーションだけが一人歩きしてしまって当日を迎え、最後には「死人さえ出ていないものの」多数の犠牲者を残すことになる。

まるで映画のような話だが、これがもしハリウッド映画だったら首謀者はどこかの正義漢によって勧善懲悪、詐欺行為に遭った人々やその労働者たちにも全員相当の金額が支払われ、ハッピーエンドとなったであろう。しかしこれは映画ではなく現実で、そこにはまだ生々しい傷を残した人々がたくさんいる。
まさに、虚構と現実を入れ違えたとんでもない事件である。

犠牲となった彼ら(特に首謀者を信じて彼の元で働いていた人々)に、相応の救済があることを切に願う……。
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